仕事用で外出したとき、譲り合わなければ車がすれ違えないような細い道で、対向車を阻んでいる自転車を真正面から見た。
自転車上の男性は、黒いフードをすっぽりかぶり、黒いパンツ、黒いスニーカー、そして黒いマスクという全身黒づくめの若者。
なかなかおされなオールブラックなのだが、仰天したのは、ハンドルの上に両肘をもたせかけ、右手に1台、左手に1台、スマホを持って、交互に見ながら自転車をこいでいるという離れ業。その上、胸ポケットから伸びたイヤホンが、両耳につながっていた……
車の渋滞を引き起こしている犯人であることのいらだち以上に、私は感動せざるを得なかった。
あの態勢で自転車を動かせるとは……
私には「絶対」を十個並べても足りないほど、「無理」な行動。
それどころか、電話をしながら歩くことも無理。
運転中にスマホ云々も無理。
今や、スーパーのレジで、ポイントカードを出し、割引券を出し、paypay払いの準備をするだけでもまごまごして手間取る。
一度に複数の行動はもう、できない。できる気がしない。
まだ、ATMで振込手続きができるだけ、幸いだと思っている。
若いってやっぱりすばらしいことなんだな。
は? 事故ったらどうするって?
ま、せいぜい気をつけなはれ。
自己責任、自己責任。
…って、自分が巻き込まれたらたまらないな。
そうなったらきっと気が変わる。
だから若い者はだめなんだ、と。
その姿 ある意味アクロ バットなり
鞠子