あと少しで職場に着く、というところに、とっても見通しの悪い四つ角がある。その四つ角の手前に細い路地があり、そこからときどき人が出てきたりして、それも危険だ。だがら、十分減速し、相当、前後左右に注意を払って、私は左折する。
…はいいのだが、この路地からときどき出てくるおじさんが、「怖い」のである。
一見、菅原文太風。
長身の坊主頭にサングラス。背中に鉄筋が入っているのではないかと思うような姿勢の良さで黒っぽいスーツ。「姉さん、ご苦労さんです」なんて、ドスのきいた声であいさつしながら敬礼されたら震え上がってしまいそうだ。
初めて見たとき、「これは絶対その筋の人だ。路地の奥に、組事務所があるのかもしれない」とまで想像した。
ところが何度か見かけるうち、そのコワモテぶりとは相反するものを手にしていることに気がついた。
左手のアタッシュケース、これはそれっぽい。だが右手に必ず「白いタオル」を1つ、持っているのである。汗拭き用ではない。新品でビニールに入っている、つまり「販促用タオル」みたくなのである。
…もしかして、このおじさん、新聞購読を勧める営業か何か?
だとしたら、怖すぎる。
見た目で人を判断してはいけないし、判断を誤る可能性があることも重々承知しているが、この人が飛び込み営業をする人だったら、あまりにも怖い。
にこやかにほほえまれたら、なお、怖い気がする。
だめか、こんなルッキズム。
私が間違っているか。
だとすれば どんな職なら 許すのか
鞠子