母の納骨堂にお参りに行く際、その途上にある葬祭場で、人がずらりとならんでいた。
駐車場も満杯で、スーツ姿の「いかにも葬儀場のスタッフ」らしき男性が数人、車の誘導やら行列の整理をしている。
並んでいる人たちは一様に軽装で、普通の葬儀には見えない。
有名人、それも若者が亡くなったのだろうか。「普段着でお越しください」がこうなるほど、主義主張が徹底しているラッパー、とか?(←発想が貧困?)
だがしかし、そんな有名人なら、新聞に載るとかして何かしら情報が入ってくると思うのだが、全然聞いてない。
もしかして、葬儀場主催の互助会員向けイベント?
それにしては駐車場誘導係は、本来「ライバル」である母の納骨堂があるお寺の駐車場にまで、車を誘導し始めている。
お寺と話はついているのだろうとは思うが、それはともかく、いいのか、葬儀場でこの「密」状態。
この時期にこの密イベント。開催する方もする方だが、参加する方もする方だ。私の車がなかなか前に進まないことも相まって、その配慮のなさに、だんだん怒れてきた。
それでもなんとか納骨堂にたどりつき、お参りをすませ、駐車場に戻ったとき、プラカードを持って走るスタッフが目に入った。
そのプラカードには、こう書かれていた。
「職域接種会場はコチラ」
…そうだったのか…
社員関係対象なのか互助会会員関係対象なのかわからないが、行列のできている葬儀場は、職域接種会場だったのだ。
そう言われれば、大きな葬儀場は接種会場にぴったりだ。
だが、死者を弔うところで生き伸びんがための注射を打つ、その皮肉さが、なんだか「おもしろうて、やがて悲しき」みたく、複雑な思いだった。
打てるなら 墓でも外でも 構わない
鞠子