某店で買い物をしていたら、そこそこ品のよさそうなおじいさんが、レジでなにやらクレームを申し立てていた。
聞こえてきたのは「動かんかったで、これはだめやと思って」。
対するお店の人「このランプはついたんですか」
こういう出来事、興味シンシンなのだが、かといって近づいてみるのもプライドが許さず(←ヘンな話だが)、いろいろ買いまわるふりをしながら耳だけダンボにして聞いていた。
ウィィィーン、という電気が入った音がする。
お店の人「でも、動きますよね」
おじいさん「家では動かんかったで」
わかる、この状況。
パソコンとかコピー機とか、何か不具合が勃発する。にっちもさっちもいかなくなり、業者さんに来てもらう。すると、普通に動く。で、業者さんが帰る。また不具合を呈する……
お店の人は、何回かスイッチを入れたり切ったりしているようで、ウィィィーン音が聞こえたり止まったりする。つまり、ごく正常に動いている、と思える。
だがしかし、おじいさんは「家では動かんかったで」の一点張りなのである。
お店の人が、充電器にうまく乗っていなくて充電が不十分だったのではないかとの新見解を発したが、それでもおじいさんは「家では動かんかったで」を連呼する。
これではいつまでたっても平行線だ。おじいさんは、いったいどうしたいのか。
いい加減、お店の人も嫌になったのだと思うが、とうとう「今、動いている以上、交換もできかねますので」と言った。
これに対するおじいさんの返答は、「でも家では動かんかったで」。
嫌になったのは、お店の人だけではない。私はもう、買うものは決まった。あとは支払いだけ。だがこのおじいさんが、レジを占領しているのである。
最初の同情する気持ちはどこへやら、だんだんイライラが募り始めた
あと少し、あと少し、と買いもしないものを見て時間をつぶしたが、「家では動かんかったで」のリフレインを聞いている心の余裕は完全になくなった。
思い切って、レジに行った。
私が加わったことが、おじいさんの心を変えたのかもしれない。おじいさんは、ようやくクレームの真意を口にした。
「交換してくれんでもいい。家では動かへんのやで、返品したい」
狙いはそれか……
返品したいその問題のブツ、私は「ハンディタイプの扇風機」か「首かけ扇風機」だとばかり思っていた。
レジに置かれたそれは「電気バリカン」だった。
おじいさんの頭を思わずガン見してしまった。
その店で 電気製品 怖すぎる
鞠子
(だって、明らかに「安かろう・悪かろう」の店なんだもん。消耗品、それも寿命がうんと短いものしか買ってはイケナイ)