夕べ、テレビで『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』を観ていて、思わず目が釘付けになった。
被害者を救急車に乗せる際、同乗するよう指示された刑事が一瞬たじろいで、「コロナが……」と言ったのだ。
この時点で、もう、へぇぇ、と思った。
そして、病院でのシーン、聞き込みのシーンなど、「マスクをしている」のである。
ただし、日本のように「しっぱなし」という感じではなく、ごく自然につけたりはずしたりする。
この着脱の様子では、感染予防にはならないなと思うが、それにしてもいち早く日常を、それもさりげなく取り入れるところに日本のドラマとの違いをつくづく感じた。
この番組に限らず、海外ドラマチャンネルを観ていると、日本では絶対に取り上げないと思われるテーマを堂々真正面から取り上げている。
昨日の『LAW&ORDER』も、テーマは人種差別だった。それも、人種差別主義者ではない人の「本人すら意識していない心の底の差別」に踏み込んでいた。「私は人種差別します」という人より、変えるのは難しい。それでも、ここが変らなければ本当の平等は訪れないところまで問題を深掘りするのだ。
セントラルパークで青年がレイプされて倒れていた。現場にいた白人女性コリーンはジェイボンという黒人男性が犯人だと訴える。野次馬が集まり、現場が騒然とした状態に。駆けつけたベンソン刑事とフィン刑事は、その場でジェイボンが手配中の男であるという情報を入手したため逮捕に踏み切り連行した。ところが、この件に関してジェイボンは無実。むしろ、コリーンの方が、札付きのクレーマーだったのだ。
ジェイボンが手配中であることは調べたくせに、コリーンの方は全く無調査で言い分を信じた。
それは、コリーンが白人であり、ジェイボンは黒人だからではないか。
そうして「無自覚の差別」を追及されたベンソン刑事(マリスカ・ハージティ)。
彼女は主人公なのである。
追及され、己の心と向き合うベンソン刑事の苦悩で番組は終わった。
なんの結論もない。
混乱する現場で、双方の前歴まで調べなければならないとは、あまりにも酷な話ではないか、とも思うが、一方で、そこまでやっても十分ではない深刻さも思う。
観ている私もめちゃめちゃ考えさせられた。
無自覚の針ほど芯の芯を刺す
鞠子