本日のレトロ・サスペンス劇場鑑賞は『裂けた眠り――人妻を狙う催眠術の甘い罠』。
うーん、なんともアダルトビデオチックな題名。
1982年、TBS系で放映された作品らしい。
主人公・美弥子は、夫と新宿を歩いていると、突然見知らぬ男に「自分と夫以外、知らないはずの身体のホクロ」を口にされ仰天する。
実は催眠術で人を自由に操る犯人がいて、美弥子は知らないうちに体を売っていたのである。
この犯人は、女性に対して怒りと憎しみを充満させていて、このような凶行に及んでいた…
…と大方これだけの内容なのだが、何がすごいか、その1、美弥子を演じるのが「辺見マリだ」ということ。
役どころからすれば、普段は「貞淑すぎるほど貞淑な妻」であり、催眠術にかかっている間は「絵にかいたような妖婦」でなければならないのに、いつも同じ顔で同じ表情。若干、目がうつろになる程度。
このころ、人気絶頂だったんだっけ? それで主役に抜擢されたとしか思えない。
そして何がすごいか、その2。美弥子の夫・常夫が、あり得ないほど身勝手ヤローなのである。
自分はさんざ、遊んでおきながら、美弥子の妊娠を知ると「俺の子じゃない!」とか言いながら、殴ったり蹴ったりする。こんなDV男に描く理由がよくわからない。
そして最後にすごいのは、終盤、クラブで美弥子とフリーライター・渋谷(←いろんないきさつがあって、この事件に首を突っ込んでしまい、結局、美弥子を助ける)が飲んでいるシーン。舞台で歌っているのが、まさかの戸川昌子!! 2時間ドラマのワンカット、それも「背景」にすぎないクラブの舞台で戸川昌子を出すとは…なんて贅沢な配役!!
だがしかし、エンドロールで、原作者が戸川昌子と知り、驚いたものの納得した。
さて、犯人を演ずるのは河原崎長一郎。真相を突き詰めていく精神科医を演ずるのは仲谷昇。
この2人、さもありなん配役。
そして、最低DV男を演ずるのは入川保則。フリーライター・渋谷を演ずるのは夏八木勲。
やっぱり大変贅沢な脇役のみなさんです。
だから余計に辺見マリが…………
古い作品は、こうして言いたい放題。いろんな意味で楽しめるな。
視点だけ泳いだところでつくりもの
鞠子