ここのところ、文学講座で取り上げられているのが「志賀直哉」。
現在、短編を読み進めている。
志賀直哉、と言えば、『小僧の神様』『城の崎にて』で、いかにも「教科書向きな優等生作品」という印象しかなかったのだが、どうしてなかなか。
簡潔で平易で乾いた文体。
登場人物の誰にも肩入れしない冷静さ。
いつもどこか、さめている。そのくせ冷たさを感じさせない。
すごいなあ。
「小説の神様」と言われるのもよくわかる。
私的には三島由紀夫より、うんと惹かれる。
···はともかく···
課題図書1冊、Amazonで購入した際、カバー装画のことで、Amazonに怒っているカスタマーレビューを見つけた。
カバーが志賀の肖像写真だったから購入したのに、送られてきたのが普通の絵だった、看板に偽りあり、と。
この人は「普通の絵」と言っているが、実は熊谷守一の絵なのである。
レビュアーさんには申し訳ないけど、Amazonは置いといて、私は新潮文庫のセンス、さすが!と感動した。
かたや小説家、かたや画家だが、このふたり「創作」という点において、根っこが共通している、と思うから。
対象を徹底的に見据え、余計なものはすべて取り除いて書く&描く。
父との和解を題材にした『和解』のカバーが『ヤキバノカエリ』。
もうこれ以上ないほど、イメージがぴったりだと思う。
読む前、読む後、カバー装画をながめて楽しめるのも文庫本を買う理由のひとつ。だから私はどうしても電子書籍で読む気になれない。
あ、でもレビュアーさんの気持ちもわからなくないわあ。
志賀の肖像写真のカバー装画版、これはこれで、なかなか味わい深いので。