今日は3ヶ月に1回の歯科検診の日。
「歯科治療=大っキライ」なのだが、これも「エステの一環」と自分をなだめてきちんと通っている。

ところで私、この歯科医に「小学生のときから診てもらっている」のである。
そんなウン十年にわたるおつきあいなのに、今日、治療後、妙なことをおっしゃった。

「鞠子さんのこの前歯なんですけどね、ちょっと短いでしょう」

そんなこと、言われなくても百も承知。小学4年のとき、学校で机にぶつけてしまい、先端が欠け、裏側が少し剥がれたような状態になってしまった。
つまり、小学4年生以来、ずっと「私の左側の前歯はちょっと短い」のだ 。

「黒ずんでませんし、神経は傷んでないようですからいいんですけどね」

…で、先生、おっしゃりたいことは何?

「治療して、隣の歯と長さをそろえるという方法もありますけど」

…っていまさら、なんでこんなことを。今まで、ただの一度も言われたことないのに。

疑ってしまった。
この歯科医院、娘さんが継ぐことになり、建て替え、新しい診療台や機器を投入した。
だから何としても、客単価を上げなければ――そんな思惑が働いてやいないだろうか、と。

先生が差し出した手鏡で、我が前歯をしみじみ眺めた。
2本の前歯、揃ったら美しく見えるだろうか。チャレンジしてみるか。いや待て、そうとは限らぬぞ。きれいな歯に治したがために、いかにも「造り物でござい!」というお顔になってしまった人を知っている。
それよりなにより私、「歯科治療=大っキライ」ではないか。
…迷うまでもなかった。

「いえ、このままで。この方が愛嬌ありますから」
 
 



両前歯少し寄りそう彼が好き
鞠子