…ということで(ん?どういうことで?)今日は定期演奏会。
BACHの最高傑作とも言われている『マタイ受難曲』を歌わせていただいた。

これまで何度マタイを歌う機会に恵まれただろうか。
私がこういう歌を歌うきっかけになったのも、初めてステージに上がったのも、このマタイ受難曲だった。

何度歌っても、本当に毎回、新たな発見がある。

今回、私がすごく気にかけていたのは「コラール」なのである。
マタイの中にコラールが何曲もあるのだが、若い頃は他の合唱部分に比べて歌うのが「たいくつ」――と思っていた。
経験が浅い頃は、だから「コラール後回し」だった。
ところが…実はたいくつどころの騒ぎじゃない。
どのコラールも、「心のありようを音で表わしたらこうなります」という曲に思えるのだ。
だから、これを歌うのは至難の業なのだ。

おまえ、ようやくそれに気づいたか…
BACHが天の上でにこにこ笑っている気がする。
BACH音楽は本当に難しいが、一方で、そんなおまえでも歌っていいよ、と言いながら懐に抱いてくれる器の大きさをいつも感じる。

「BACHがあれば、生きていける」といった音楽評論家・加藤浩子さんの言葉。しみじみとかみしめております。
 
 
 
 

歌うたび赦され笑まれ涙する
鞠子