今回の声楽レッスン。
先月のレッスンでとことんダメ出しされたグルック『エウリディーチェを失って』。
この曲は、先生のご指定なので、なんとしても通らなければ次に進めない。

歌詞がうまく乗らない部分、何回も何回も練習していったのが功を奏し、意外とすんなり合格。
「じゃ、次の曲」と言われたので、カンタータ24番のアリアを歌ってみた。
結果、先生の第一声。
「うーん、やっぱりカンタータの方が楽しそうでいいね」

…カンタータを「楽しそうに歌っている」なんて大変恐れ多いのだが、もう何年も「カンタータ祭」をしているほど好きなことは間違いないので、BACH様には、どうか失礼を許していただきたい。

と、それはさておき、先生、カバンからなにやら楽譜らしきものをお出しになった。
「これ、貸すから」

え? なになに? え? ものすごい年代物の輸入楽譜。白手袋して触らなきゃならないくらい、使いこまれて古くなった楽譜。
…これがなんと、カンタータのアルトアリアばかり集めた楽譜だったのである。

もう、手がふるえてしまった。
 
BACHのカンタータは、全部で200以上もある。さらにその1つ1つが複数の曲で構成されているのだが、私はそのなかからアルトのアリアを選んで練習している。
つまり、楽譜が非常に入手しにくいという難点があるのだ。
音楽トモの中に、ほとんどすべてのカンタータの楽譜を持っている人がいて、お願いすると喜んで貸してくれていたのだが、諸事情があってそれができなくなった。
また別の音楽先輩トモが、「最近、バッハの宗教曲全曲をまとめたものが、カールス社から販売された」という情報をくださったのだが、当然のごとく、かなり高額だ。
どうしよう、どうしょうと迷っている間に、申込期間が終わってしまった。

そんなとき、偶然とはいえ先生の気遣いと貴重な楽譜に、すごく感動した。
楽譜って、宝物だもの。私だって、書き込み続けた楽譜は絶対に手放せない。『ヨハネ受難曲』など、何度も何度も修理したが、それでもピアノピースのようにバラバラになってしまっている。新しいものをもう1冊買ったが、それでも古い方を手放せない。この曲を練習する際は、両方持っていく。

貸して下さった楽譜に載っているアリアは、特別難しそう(ただでさえ難しい)。
私なら選ばない難度。
CDを聴いて、愕然とした。
でも、何が何でもカンタータ、がんばらねば、と思った
 
 
 
 

書き込みに懐かしい日がよみがえる
鞠子