久々の映画鑑賞は『サバービコンー仮面を被った街』

予備知識ゼロで見た。
監督がジョージ・クルーニーであることと、チラシがとても印象的で、観る気になった。
昔見た「家庭科の教科書」の扉に出てくる「幸せな家族」とキャプションがついた写真のアメリカ版みたく思えたのである。
だが、パパらしき男性(マット・ディモン)の襟が、血で汚れている。
まさしく、「この2人、何かおかしい」のである。

サバービコンとは、住宅街の名。
ニュータウン、と言った方がぴったりくるかもしれない。
安全・安心・平和が売り物なのだが、それは実は「白人ばかりだから」という暗黙のルールがあったから。
そこへ、黒人一家が越してくる。
ロッジ(←この主人がマット・ディモン)一家の隣に。

「異物は排斥する」とばかりに、街をあげての露骨な嫌がらせが始まる。

…ということで、これは人種差別に一石を投じた映画か?と思ったのだが、実はロッジ家の方こそ、血なまぐさい事態に陥っていく。
車椅子生活の妻を強盗に殺させ、保険金をせしめ、妻の双子の姉とちゃっかり再出発を企んでいたのだ。
一人息子・ニッキーなど、完全無視。
すべてが露見した後も、父は「お前も巻き添えで死んだことにするか、お前が全てを見なかったことにして、パパと一緒に新天地で生きるか、どちらか選べ」なんてことを、平気で諭すのである。

…ということで、人種差別の話の比重がトーンダウンするのである。

この映画は、いったいどちらを描きたかったのか、わからなくなってしまった。
「いや、両方さ」と言うなら、それぞれの事件をもっとリンクさせないと。

もし、強引に結びつけるとしたら、どんなに迫害を受け、危険にさらされても堂々としている黒人一家と、一見幸せそうでもなかはガタガタなロッジ家と、どちらが幸せかという視点、かな。

いずれにしても、恐ろしい話であり、結末は最悪だ。
だが、全体を通して、意識的に軽く軽く作られている。音楽しかり、映像しかり。それがまた、妙に不快感や不安感を催させるから、映画としてはある意味大成功、ということか。





子どもだけ正義貫く情けなさ
鞠子