昨日、老舗のアパレルメーカーL社が会社を譲渡すると知った。

私が幼かった頃、事業を興したばかりの父は、L社の創業者夫妻にずいぶんお世話になった。
以後、月日は流れ、L社も代替わりし、今では全く疎遠になっているが、多額の債務超過故の譲渡であり、昔の野心にあふれた父やら、飛ぶ鳥を落とす勢いだったころのL社やらを思い出すと、ちらと胸が痛む。
 
今朝は今朝で、出勤途上の県道にあるサークルKが閉店していることを知った。
昨日は、営業していたのである。
当然、店内にはなにかしら告知がしてあっただろうとは思うが、会社とか商店とか、決して安泰はないのだと、改めて目の当たりにした思いがする。
 
L社もこのサークルKも、しばらくたったら全然違うものとなり、付近の風景が変わるに違いない。
 
わけあって、急きょ、青空文庫で、島崎藤村の『並木』という短編を読んだ。
そこに「8年ぶりに金沢から東京に戻ってきた」原さんというアラフォーの男性が出てくるのだが、とにかく東京のあまりの変貌ぶりに、びっくりするのである。
8年で、自分が「ものすごく田舎者になってしまった」と自覚するのである。

明治40年に書かれたものなのでまるで古く、今とは時の流れる速度も、さまざまのものの進歩の速度も大きく違うだろうが、変化に対する驚きの本質は変わらないのではないか、と思うのだ。

ただ、原さんの場合は、田舎者と言いながら、どこかに「目が輝くような驚き」があり、私の場合は「ため息が出るような驚き」であることが違う。
 
職場でオトコ後輩が言うには、
「県道沿いのコンビニ? そこは、ファミマに変わるんですよ、きっと」。
 
…そうだった。経営統合したんだった、この2つも。
 
 
 
 
 
 
風景が変われどすぐまた忘れてく
鞠子