テレビをつけたら、若かりしころの沢田研二がアップになった。
放送していたのはサスペンスドラマ『陽のあたる坂道』。
ドラマの中で、今は亡き夏目雅子とジュリーは恋人同士なのである、一応。
一応、と言ったのは、実はジュリーにはすでに恋人がいたのだが、貧しかった生い立ちをなんとしても振り切りたく、その一助として大会社の社長令嬢である夏目雅子と恋におちたからである。
原作はシオドア・ドライザー『アメリカの悲劇』。
途中、二人で川べりだか湖畔だかにテントを張るシーンが出てきた。
足場のよろしくないところで、令嬢ともども苦労してテントを張るのである。
蚊もいそうだし、トイレもなさそうだし、もちろん水道もシャワーもない。
でも二人はたわいもない会話をしながら、楽しそうに面倒な作業をしている。
そこでふと気づいたのである。
恋、とはこういうものだ、と。
ハタから見たらどうでもいいようなこと、バカバカしいことを、「おしゃべり」しながら「共同で行なう」ことがとっても楽しいのだ。
時々、見つめあったりして。
偶然、手が触れてドキドキしたりして。
…いゃあ、なんでこんな当たり前のこと、忘れてしまってたんだろう。
今の若い人たちも、こんな「微妙なライン上の恋」をしているのかな。
まさか、「目の前のいとしい人より遠くの誰かとつながるのがフツー」じゃない、でしょうね。
ところでこの作品に出ていたジュリーは30台前半。
この人の持つ「退廃的」な雰囲気は、やっぱり色っぽい。
立身出世のための恋なのか、それが本気になってしまったのか、本人ですらわからないあやふやさがにじみ出て、なかなか魅力的だった。
危うくてつらくて泣ける恋の日々 鞠子