今年度シメの歌舞伎は『伊賀越道中双六』。
中村吉右衛門さま、4時30分、ほぼ出ずっぱりで、2014年の最後を飾るには、私的には「これ以上ない」演目でありました。

それで、
国立劇場、って初めて行ったんだけど。
なんか、すごく気にいっちゃった。
エントランスの照明が、ケバケバしくなくて、椅子も床も丁寧につくってある、って感じで。
古いんだけど、上品なの。
歌舞伎座よりも落ち着く。

さて、『伊賀越道中双六』、肝心の内容ですが…

これ、書いたのは近松半二、なる人。
近松門左衛門の弟子、らしい。
筋立てがなかなかグロい。
駆け落ちあり、傾城に入れあげあり、許嫁から逃亡ありと、色恋沙汰満載。
その中に「あだ討ち」が組み込まれているのだが、これまたあだ討ちのために、妻を極寒の雪中に放り出し、自分の子どもののどをかき切るという衝撃的事件ありと、冷静に考えたら、かなりしんどい。

だけど、ちゃんと笑わせるシーンもあって、長時間、飽きさせないストーリーになっており、楽しめます。

そんな『伊賀越道中双六』、今回、お勧めの役者さん。

【中村米吉さん】

まあ、この人、いつも可愛いんだけど。
今回、演じる娘・お袖、可愛さはピカ一。
普段のお顔も可愛いい。
本当に可愛い。
可愛いとしか言いようがない。
歩き方、所作、ものの言い方…女の子以上に女の子らしい。
…しつこいようだが、本当に可愛い。

【中村又五郎さん】

今回、二役。
それも、威厳大アリな殿様・誉田大内記と軽くてチャラい奴助平という両極端を演じる。
この演じ分けがあっけにとられちゃうほどすばらしい。
こういうタイプがチャラい役を演じると、いぶし銀の技が光る。
『鬼平犯科帳』でも、吉さまの腹心で出てて、静かな忠信ぶりが、見るものをほっとさせるすばらしい役者さん。

【吉さま】

妻を雪中に放り出し、我が子を殺すのは、何を隠そう吉さま演ずる唐木政右衛門。
もちろん、あだ討ちのために「鬼」になるのである。
有名(←らしい)な、「莨(たばこ)切り」。
その狂わんばかりの心中を、タバコの葉を切りながら、動作、切るテンポ、力の入れ方、表情、目の色、呼吸…すべて総動員して表現する。

う~ん、やっぱり泣けちゃった。

雪の中で倒れている妻・小谷(←中村芝雀さん)を、抱き起こし、扇子でふっとふたりの顔を隠して気付け薬を口移しで飲ませるシーン。
…頭に来るほど美しかった。

吉さま、この役を演じるのは初めてとのことで、いつもより、緊張していたような。

…でもやっぱり、本当にかっこいい。
この年の男の人しか出せない色香に、まばたきするのも惜しいくらいでした。

…こうして、鞠子の2014年度歌舞伎行脚は幕となりました。
来年も続きますが、ひとまずメデタシ、メデタシ (-o-)/




▲今回は素の米吉さん。
ね、普段のお顔も可愛いでしょう。