先週、エクステンションカレッジ文学講座の同級生であるTさんとM女史とランチをした時、私が指導教官H教授に心酔している理由を問われた。
「何にそんなに魅かれるのか」と聞かれたのである。
確かに、
H教授は、見た目はさえないオジサマだが、私は好きでたまらない。
1対1だと、固まっちゃってまともに話ができないほど好き。
それが、恋愛感情とは異なるものであるのが、これまたややこしいのだが。
好きな理由を箇条書き状に列挙したら一つ一つはさもないことで、二人ともあきれて苦笑いしていたが、これだけは、自信を持って言える理由がある。
それは、ウン十年生きてきて、初めて教わった事柄があった、ということ。
「比較して読む」、という視点だ。
登場人物を比較する、情景描写を比較する、作者の生い立ちを比較する、書き方を比較する…比較する観点は枚挙にいとまがない。
それもH教授の場合、「凡人には思いもつかないもの同士」を比較して講義をするのである。
おまけに、歌舞伎やら映画やら音楽やら芝居やら、多方面の豊富な知識を交えながら。
例えば、
谷崎潤一郎『刺青』vs金原ひとみ『蛇にピアス』
…とか、
坪内逍遙『当世書生気質』vs村上龍『限りなく透明に近いブルー』vs田中康夫『なんとなく、クリスタル』
…とか。
比較して読む、などということは、H教授に言われるまで、考えたこともなかった。
だが、これを聞いて以来、仕事においても「比較して考えるクセ」がついた。
客様A社の経営理念とB社の経営理念。
客様C社長の社員観とD社長の社員観。
こういうものの見方は、仕事上、かなり有効であることに気づいた。
そこいらのマニュアル本なんか読むより、ずっと。
私は大学でも国文学を勉強したが、こんなに魅力ある教授はいなかった。
学生時代にH教授と巡りあっていたら、今とは違う道を歩んでいた気がする。
反面、
それなりにヤマもタニも越えてきた今だからこそ、H教授に心酔できるのであり、若い頃なら、何も気づかず通りすぎたかもしれない。
この年になって、こんな素敵な指導者と巡り会えるなんて。
その偶然に、本当に感謝している。