まるで「異界の人」だった。
二泊三日の合唱団合宿で同室になったWさん。

とにかく口をきかない。
何か問うても、「はい」か「いいえ」しかない。
そして会話が途切れ、後は無言。
いたたまれなくなった私は、あちこち、他の人の部屋でおしゃべりしまくり、部屋にもどったら、彼女は電気のスイッチやドアノブをウエットティッシュみたいなもので、ひとつずつ拭いていた。

以後、2日間の間に、部屋のゴミ箱はウエットティッシュが山積。
おまけに、アルコール臭がプンプン。
どうやらウエットティッシュではなく、アルコールで消毒しているみたいなのだ。

がく然とした。

おまけに、
しゃべらないばかりか、壁の方を向いて、ぼ~っとしている時間が長い。

1日目の朝、私が目覚めたら、
真っ暗の中でベッドに腰かけて壁を見つめていた。
寝てる私に配慮してくれたのか、と思ったがあまかった。
2日目の朝は、私が目覚める前に、シャ―ッとカーテンをあけ、ガサガサ派手な音をたて、荷物の整理をしていた。

何、しててもいいけど、一言
「カーテンあけるね」と言ってくれればそれですむのに。

この人は病気なのか。

しかし、自分で団を見つけ、自主的に入団を希望してきたのである。
今回の合宿だって、参加は希望者だけだ。行かない人もいっぱいいる。
こんなに無言で、いったい何しに来ているのか。

みんな優しいし、特にアルトパートは人間関係がいいので、誰彼となくところどころで声をかけていたが、もう全員がギブアップ状態。
移動も一人。食事も一人。自由時間も単独行動。
往復のバスの中でも完全無言。

私もしまいは無視。
スマホで音とりながら、練習したり、小説読んだりして無言で時間をつぶした。

もし、病気なら、配慮してあげなきゃと思うけど、何も語らないから判断もできない。
別にもう、ほっとくしかないけど、
あまりにも「ずば抜けた新しいタイプ」。
訳がわからず、イライラする。