たまたま職場に一人だった時、S川急便のお兄さんが荷物を持ってきた。
受け取りの印(100均で買った認印)を押したら、お兄さんがその印をしげしげ見つめてこんなことを言い出した。

「K町にいませんでしたか?」

K町は、私の中学校校区内にある。
ただし、当時、その中学は、4つの小学校が集まっており、かなり広範囲。
私の家は北の端、K町は南の端だった。
だから、K町には関わりがない。
車で通りすぎることがある、程度のところだ。

人違い、だよな。

ところが、お兄さん、続けて驚きの発言をしたのである。

「大森鞠子さん、ですよね?」

…フルネームを知っていたのである。
もちろん受け取り印は、名字しかない。

「芸能人みたいな名前やな…と思ったんです。僕自身も芸能人みたいな名前だから、よく覚えているんです。僕の名前は…」

…そう言って彼は、自分の名前を名乗った。

知らない。聞いたこともない。確かにあか抜けたおされな名前だけど、そうい名の芸能人すら知らない。

…おまけにお兄さん、ますます怪しげなことを言い出した。

「ああ、どこで会ったんだろう。何で名前、知ってるんだろう。わからん」

ご本人も、訳がわからないのだ。

自宅じゃないか、前の職場じゃないかと思いつく条件を出してみたが、全く進展せず。
最後まで、詳細は解明されなかった。

なんだか気持ち悪いわ、この状況。