午後からスーパーへ買い物に行ったのだが、かなり気が急いていた。
夜、『メサイア』の練習があったので、行く前に、どうしても予習しておきたかったから。
だから、食料品売り場にしか行かないぞ、と固く心に誓って出かけたのに、ついつい、入口にある花屋で足を止めてしまった。

トレニアがある…

好きなのだ、この花。
丈夫だし、次から次へと咲くし、上下にバランスよく広がるし、花も葉っぱも色がいい。

しかもよく見たら、元気そうなコリウスもあるではないか。
しかもしかも、すべてお値打ちだ。

…ということで、花屋から立ち去れなくなってしまった。
だが、心だけは焦ってる。
早く帰らないと、音とりができぬ。

…にもかかわらず、想定外のことが起こった。
偶然、そこに客様T社長が来たのである。

万事休す…

一年ぶりに会ったのだが、信じられないほど「老け込んでいた」。
歯がごっそりなくなっていて。
花苗を買い込んでいる私の後から、「もう若い者にはついていけない」だの「息子になかなか会社を譲れない」だの、あれこれ愚痴を言い始めた。
いかん。
この状態だと、喫茶店に行かなきゃならないハメになる。

焦る私は、ふんふんはいはいと適当な相づちをうった。
それでもT社長は、ああだこうだと話し終わらず。
最後は私、かなり強引に話を打ち切ってしまった。

きっと、話、聞いてほしかったんだろうな。
ちょっぴり後味、悪いわ。
大事な客様なのに。

T社長、ごめんなさい。