岐阜県美術館で開かれている『第7回円空大賞展』に行ってきた。

円空賞を授賞した、ユーリー・ノルシュテイン。
ロシアの映像作家だ。

…などともっともらしく説明しているが、実は全く知らない人だった。
授賞者として新聞に載っていて、ゴーゴリの『外套』をモチーフにした絵コンテが展示されたり、映像化が済んでいる部分のみ、会場で上映していると知り、俄然、観てみたくなった。

『外套』は、エクステンションカレッジで、登場人物のややこしい名前に悪戦苦闘しながら読んだ「ロシア文学」で、とても印象深かったからだ。

主人公のアカーキー・アカーキエヴィチ。
私が頭に描いていたのは、「丸くて小さなメガネを下がり気味にかけた、痩せてひょろっとした男」だったが、ユーリー・ノルシュテインが描いたのは、「まるっとしてて、老眼っぽい老婆顔」、だった。

アカーキー・アカーキエヴィチは、外套ごときで人生が大きく揺れるのだが、
「外套が命綱」であることが、彼の姿勢、歩き方の絵コンテから、あるいは映像から、ぞくりとするほど伝わってきた。

酷寒の地は、まるで、巨大な「冷蔵収容所」だった。
みんながうつむいて、寒さに歯向かわぬよう、黙々と歩く町。
この酷寒が「頭の中だけの理解」である以上、アカーキー・アカーキエヴィチの奥底には迫りようがない、と、浅はかな解釈を後悔した。

…泣けた。

他にも、大賞作品はもちろん、賞の由来である円空像も見たが、泣けた。

…わからん。
美術館とかコンサートに出かけると、泣けてしまうのは、なぜなんだろ。