回覧板で、近所のKさんが亡くなったことを知った。
82才・男性・娘さんと二人暮らし。
現役時代は、大手車ディーラーの幹部だった人だ。

そういえば、連休の初めごろ、喪服姿の人がK家に入っていくのを見た。

そうか…Kさん、亡くなったんだ…
病気だったのかな。
いずれにしても、あっけない。
知ってる人が、順にいなくなっていく。

今日、外出しようと車止めを外していたら、隣のTさんがあわてて外に出てきた。

「Kさん、亡くなったんやねえ」

Tさんも、回覧板を見たんだ。

「この前、うちの嫁さんが、”Kさん家で、喪服の人を見た”と言ってたんだけど」

私と同じシーンを目撃したんだ。

「Kさん、私と同じ年やった。次は私や」

私は何と答えたらいいかわからず、曖昧に笑ってやり過ごし、車に乗りこんでから思った。

私の所属している合唱団に、TさんやKさんと同年ぐらいの女性がいる。
Yさん。
悠々自適の一人暮らし。
BACHを歌うために、県外の合唱団にも所属、それだけでなく、海外まで歌いに行ったりしている。
押し花はプロ級で、生徒も持ってる。

もう一人、こちらも同年代。
エクステンションカレッジのお仲間、Fさん。
毎回、上品なスーツにハイヒールをはき、イヤリングをつけてやってくる。
髪を栗色に染め、お化粧もきちんとしている。
カレッジ歴もかなり長く、明治~大正時代の文学に精通している。
でも、打ち上げ会など、絶対、メインテーブルにつかず、隅でひっそりたたずんでいる。

命はいつ尽きるかわからない。
でも、どうせ生きるなら、YさんやFさんのように、好きなことができる人生でありたい。
今、私が「ステキだな」と思うよう、年を取った時、若い人に思われたい。

…それか、あっさり死ぬか、どちらかがいい。

ちなみにKさんは、ガンだったのだそうだ。

娘さん、私より一級下。
また町内に、独り暮らし家が一軒増えた。