今日、仕事中、客様Tさんからつらいメールが携帯に送られてきた。

「鞠子さん、Yさんが危篤らしいの。
すごく後味悪い。どうしよう…」

メールを見て、私もすごくショックだった。

このYさんは、かつてのうちの客様。
おまけにTさん、Yさん、私の3人だけが共有している秘密がある。

それは、
3人とも同時期に悪性腫瘍の手術をしたことだ。

中でもYさんは、術後、過酷な化学療法を強いられた。
しかし激しい副作用にさいなまれ、ぼろぼろになったYさんは再発覚悟で治療方針を変更した。

…そして7年が経ち…
とうとう…

Tさんが「後味悪い」というのは、昨年、二人の間に仕事がらみのトラブルがあり、以後、気まずいままの状態で今に至っているからだ。
危篤だということも、本人や家族から直接聞いたわけでなく、別の知り合いを介して知ったことらしい。

あるいは死に至るかもしれない病名を告知され、各々が戦い方を選択し、ここまで生きてきた。
私自身、病気をきっかけに、生き方が180度変わったと思う。

大学に通えるのも、今だけかもしれない。
BACHが歌えるのも、今だけかもしれない。
この小説が読めるのも、つたない文章が書けるのも、今だけかもしれない。
南朋さまや亀治郎さまにに会えるのも、
この服が着られるのも、
スイミングで泳げるのも、

全部全部、今だけで、明日はないかもしれない。

いつそういう事態に陥っても、できるだけ後悔のないようにしたい。

病気以来、私はずっとそう思って生きてきた。

じゃあ、
そんな事態が今きたら、
後悔はないだろうか?

そうだね、
1つだけ、1つだけかなえたいことがある、かな。
私はその1つがかなうまで、取り合えずは死ねないなって思ってる。

Yさんも、そんな1つがあるんだろうか。
Yさんのことを思うと、たまらない気持ちです。