
まだ幼稚園に通っている頃から、わたしは定期的に自家中毒という名の病気にかかっていた。
とにかくお腹が気持ち悪く、今にも吐きそうという感覚が何時間も続く。
父の機嫌が悪くなるのが怖くて、必死で吐き気を堪える。
夕食の時間になり
母に「お母さん食べれない」と訴えると、
「そんなの毎回、あんたの気のせいなんだから食べなさいよ」と突き放される。
酔った父が「あっち行ってろ」と、不機嫌そうに言う。
わたしは、ひたすら洗面台の前で、吐き気とたたかうしかなかった
真冬の洗面台は凍えるように寒い。ガタガタ震えながら、30分でも1時間でも吐き気と闘い続けた。
「もう大丈夫かな」と少し離れようとすると、反射的に再び吐き気に襲われる。
すぐ横にトイレがあったため、家族が何度もわたしのうしろを通り過ぎる。けれど、父も母もわたしに声をかけてはくれなかった。
洗面台の鏡越しに見える母の顔は、「本当に具合が悪いのか?」と、怪訝そうな顔をしながら、そのままストーブのついた暖かい居間へ戻っていく。
わたしは、寒さと吐き気、そして誰にも助けてもらえない孤独の中で、震えながら立ち尽くすしかなかった。
✴︎自家中毒「周期性嘔吐症」
一般的に精神的なストレスや心身の過緊張が引き金となって起こると言われています、