『潮音』2024年4月号の歌より | 短歌結社『潮音』

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『潮音』4月号の「探照燈」潮音集Ⅰより

 

 

 

腰かがめ銀杏の落ち葉拾ふ人シアトルの街の凍てる早朝

 

佐藤容子

 

 

 

〝ハンターズムーン〟と名付けられし満月の傍に寄り添ひ光る木星 

 

松山裕子

 

 

 

歌つくり今日は締切り提出日やる事のあり幸せな日々 

 

荻上美紀子

 

 

 

大事なのはどんな独裁者も時を止められないといふことである 

 

楯 正充

 

 

 

月末のこの冬空は青く澄み浅間山の稜線くつきり描く 

 

田中和子

 

 

 

モノトーンの冬の通りに笑顔よぶ新店カフェのエディブルフラワー 

 

武田瑞穂

 

 

 

燃え上がり緋色に映える一本紅葉一人見て居る庭の片隅 

 

玉置勇夫

 

 

 

名寄市の低緯度オーロラの映像は夜の静寂をうす赤くして 

 

菅野礼子

 

 

 

干し柿を見れば故郷を思ひ出す白い粉吹くあの干し柿を 

 

村元綾子

 

 

 

信州の今年のりんごは不作なり一つ一つを味はひ食まむ 

 

土田安子

 

 

 

曇天を破つて青き目のごとく空現れてふつと閉ぢゆく 

 

中納久美代

 

 

 

孫二十歳成人祝ふ宴なりわれの米寿も祝はれてをり 

 

古山信子

※「二十歳」に「はたち」のルビ

 

 

命とは戦ふことか是の世のど真ん中には戦争がある 

 

三好幸治

 

 

 

看護師に「あなたの笑顔すてきね」と言はれ明日への希望いただく 

 

岡田さかゑ

 

 

 

こんなにも生きられるとは奇跡かも息ができない過去に溺れて 

 

潮 薫

 

 

 

生きることと詠うことは同じこと明るい歌を詠む前を向き 

 

新開貴典

 

 

 

歌うまくなりたいならば師の曰くともかく作れとにかく詠へ 

 

大島正克

 

 

 

それあれと二語で済ませる怠慢を国語辞典に詫びたき夜半 

 

*はなのレイ

 

 

 

押し返し押し戻しつつアイロボがホモサピエンスを凌駕してゆく 

 

小林恒夫

 

 

 

ゆつくりと飛行機雲のくづれゆくただ生きて来しひとりの空に 

 

渡辺敏子

 

 

 

雪の来て雪に埋もるる愉悦あり六つの形の天よりの花 

 

坂倉恵美子

 

 

 

※「潮音集Ⅰ」は同人の方の作品欄です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は2月号)から、その月の担当者が注目した歌をあげコメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。
 

 

 

 

 

 

(編集委員・ブログ担当)