『潮音』10月号の「探照燈」潮音集Ⅱより
老ゆる身の不調は全て受け入れて生きる柱に短歌詠みゆかん
*傳法けい
※「短歌」に「うた」のルビ
いつの間にか裸木は輝く緑なり風に応えて新葉揺るる
*モス韶子
「慣れなさい慣れる他ない」口揃へ我に皆言ふ寡婦の日常
村林久美子
元旦の地震のニュース聞きながら賀状読みをり辛き想ひに
長利冬道
人間の作り出したる文明に今し地球の壊されつつあり
山田政明
想ひにし人と一瞬すれ違ひ人混みの街に後ろ姿を追ふ
畑中和子
青空にピンクの綿を細長くちぎって貼ったような夕焼け
*藤森寛生
サーファーの親子並んで深々と海に一礼 夕影長く
*岡部千草
琵琶湖線彦根・安土過ぎ近江へといよよ近づく全国大会
大倉田鶴子
背の痛み酷くなりをり生きゆくは修行と言ひし亡母の星何処に
二川紗都子
四人を救出せしも百人を超す死者、二百人以上の怪我人
宮﨑富子
※「四人」に「よつたり」のルビ
「冷房は惜しまずに」また「節電」も頭悩ます酷暑の近し
*島崎みち
骨折を知らせず一人耐へぬきし母の胸中今にしておもふ
宮澤洋子
祭礼の御輿行列先頭に太刀をかかぐる 止まぬ戦争
*金田康子
少しばかりだぶついてゐる制服の黒く光れりバス待つ生徒
谷 喜久子
※「潮音集Ⅱ」 は、入社10年前後の特別社友の方の作品です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は8月号から)、その月の担当者が注目した歌をあげ、コメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。
*は現代仮名遣い。
(編集委員・ブログ担当)