『潮音』4月号の「探照燈」琅玕集(後半)より
十二月八日の虚空 少年の裏ごゑに似て啼き止まぬ鳶
堀井美鶴
カマキリは朝のガラス戸登りゐるつぶされるなよ暦は「小雪」
野口三重子
踏みとどまるその脚力を養はむ視界は冬へと移つてゆくが
大関法子
強き霜いつきに梅の葉散らしたり 言葉ひとつに日中間冷ゆ
青木八重子
二時間の時差の狭間でメッセージ行き来すスマホにボーダーは無し
中野迪瑠
中野では今でも雛市あるだろか昼寝の夢にふるさと想う
*疋田悦子
風の中雨がにほへばわけもなく心が踊る季節の隙間の
石山彰子
※「季節」に「とき」のルビ
歳晩の赤、白、絞りのシクラメン諸手を伸べて寒気押し上ぐ
和田倫子
月光に関屋の跡のしろじろと西行・芭蕉のこころに叶ふ
三瓶弘次
涼風の末尾は“to be continued” 漸く秋の圏内となる
北島邦夫
この日頃メイクをせずに過ごしをり面輪の年輪亡き母を越ゆ
相澤美惠子
※「琅玕集」は幹部同人とそれに次ぐ方々の欄です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は2月号)から、その月の担当者が注目した歌をあげ、コメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。
*は現代仮名遣い。
(ブログ担当)
