『潮音』11月号の「探照燈」潮音集Ⅱより
入院し環境変はり短歌あまた二十首詠に目覚めたる我
井上昌子
日常を逃れ来し山ゆくりなく吾の眼前に姫小百合の花
田中美紀子
立ち止まり四つ葉のクローバー目で探す今よりちょこっと幸せほしい
*春田俊子
感染症五類になれどわが街にコロナ患者はじんわりと増ゆ
矢部芙沙子
何年も杉菜と戦ひ克服もできずに吾は高齢となる
新保薫代
梅雨最中そそと咲き出す桔梗花盆の祭壇飾るも間近
*市村洋子
幾たびの峠を越えて喜寿となり露にあざやかな紫陽花いける
*伊藤幸子
夫を待つぼつぼつ帰るやデイサービスより花に水くれやりながら待つ
*松本紀子
遊ぶように仕事している上司見て手本としたい思考や生き方
*齋藤亮子
おやすみと亡夫の写真を胸に抱きオカリナ習ひし君をなつかしむ
兼巻昭子
施設での七夕祭りの短冊に「家に帰りたい」願いのありて
*国伝房子
書籍類手放すときの切なさよ目に見えぬ大事逃げゆくやうにて
山本浩子
雨と陽の魔法にかかり紫陽花は輝きをまし宝石になる
*杉浦真佐子
※「潮音集Ⅱ」 は、入社10年前後の特別社友の方の作品です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は9月号から)、その月の担当者が注目した歌をあげ、コメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。
*は現代仮名遣い。
(編集委員・ブログ担当)