『潮音』2月号の歌より | 短歌結社『潮音』

短歌結社『潮音』

短歌結社・潮音のブログです。結社の概要、お問い合わせについてはプロフィールをご覧ください。


 『潮音』2月号の「探照燈」琅玕集より



人の生きの考慮の跡をたどりゆくおろそかならず全集十巻(水穂) 
木村雅子


つかまりしベットの柵の冷たくてわれの心のとらへ難き日 
髙崎亘代


虹生れて大滝がふと透くものをおお福島の闇見ゆるなり 
波汐國芳
※「生」に「あ」のルビ


無月の天ほのと明るし聖堂の点されクルスの影のきはやか 
石橋妙子


台風の逸れし明るさ蝶二匹舗道にしるき影落し行く 
碓井八重子


老いて病み故郷を捨て家を捨て登る高野の道の木漏れ日 
佐治千嘉子


人類の闘争絶えざる此の地球 宇宙の迷ひ児不肖の星か 
伊部尚子


「咲いてるよ」そよろと風が告げにくる金木犀は見えないけれど
 木下瑜美子


諦めること多くなりしこの日頃思ひ出ばかりが膨らんでくる 

真島正子


終焉は病院葬儀は斎場の友の新盆を自宅に見舞ふ 
小林正人


五色沼の観光ホテル閉ざされぬ原発風評が坂登り来て 
波汐朝子


艶やかに紅葉を降らす落葉松の豊けき孤独のひとときにあふ 
伝田幸子


妻葬る祖父の肩先濡らす雨少年はそつと傘さしかける 
小市邦子


戦場を生き延び父は生還しこの世に生を亨けたるわれか 
木村光雄


風強く雨また強く台風となれば脳裏に福島の原発 
鈴木隆夫



*「琅玕集」は幹部同人とそれに次ぐ方々の欄です。「探照燈」は前々月の各欄(今回は2014年12月号)から、その月の担当者が注目した歌をあげ、コメントを加えた欄。ここでは歌のみ紹介します。







(編集委員・ブログ担当)