『潮音』1月号の「探照燈」潮音集Ⅰ(東)後半より
静かなる主張は揺るる吾亦紅 存在なんてこんなものです
曽野誠子
ピエロのごとく少女は周りを笑はせて何を憂ふやふいに俯く
伊藤典子
三百年に一糎つもる鍾乳洞その一滴が襟元に落つ
原子繁美
線量計胸につけつつ子どもらは向日葵の野を嬉々と駆けゐつ
野村 勝
※「線量計」に「ガラスバッチ」のルビ
※「線量計」に「ガラスバッチ」のルビ
やつぱりね言葉を呑んで慰める無理を知りつつ頑張る人に
丸山厚子
拉致されし人の怨念渦を巻き怒濤となりて寄せ来る浜か
桑原三代松
チューブつけ眠りし父の病室の窓に崩るる積乱雲見ゆ
三上直行
はないかだ おきな 利休 忍草 声にし言へば野の花美しき
中村泰子
うから寄り弟の埋葬済ませ女達精進の席饒舌となる
志村琴美
七月の陽を浴びシャツよ白くあれ過ち恥じる少年のため
*荒木 孝
水底に大き魚の動かざる生きて化石となりたる吾か
*竹野内浩子