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エトランゼ-別館-

元がん患者。
主婦、時々、旅人。

7月29日、朝、大事な戦友を失った。

ちーちゃんは、私より数ヶ月早生まれの同年代がん患者で、いつも前向きに自分の病気と闘っていた。
ブログで知り合ったインタネット上の友人の一人だったが、初めて会った時は"コレ絶対初めてじゃないよね"というくらいに盛り上がって打ち解けた。

 

 

ビールが大好きで、パンダが好きで、古代文明のミステリーが好きで、小柄で可愛い女性だった。
世界一周の時のお土産はマヤ文明グッツがご所望で、何度も始まり終わりを繰り返すマヤのカレンダーを、おもしろいと気に入ってくれた。

 

 

旅先で私が送った写メにデコレーションしてくれて、可愛いイラスト風にして送ってくれたこともあった。
ホームシック気味の私を励ましてくれたのだろう。
嬉しくて、彼女の送ってくれたイラストを携帯の待ち受け画面にして旅していた。



 

エトランゼ-別館--ちーからのプレゼント



 

彼女に会いに倉敷を訪ねたのは彼女が亡くなる1ヶ月ほど前のことだった。
もともと小柄な彼女の腕が、いっそう細くなっているのを見て胸が痛くなった。
それでも彼女の笑い声を聞くと、また一緒にビールが飲める奇跡を信じたくなった。

 

 

7月29日の朝、彼女の双子の妹さんからメールをもらった。
彼女の訃報を知らせる一通だった。

 

 

あの日から、ずっと心にはぽっかり穴が開いたままで、それを未だに埋められずいいる。
久しぶりに日記を書いても、彼女からのコメントはもうない。

 

 

戦友をなくす度、こうやって心の穴が増えていって、いつか全部空っぽになってしまうのかもしれない。
そんなことを考えたりしながら、ただがむしゃらに仕事に打ち込んで、毎日を過ごしている。
それでも、生きていかなきゃならないから、何かにしがみ付いていないといけない。

 

 

なんて、あまり弱音ばかりはいていると、ちーにしっかりしろと言われそうだ。
大丈夫。また旅をしながら、少しずつ心を埋めてけばいい。
大丈夫。大丈夫。

 

 

おつかれさま、ちー。
しばらくしたら、また会おうね。
今度はインカ文明のグッツを持って会いにいくよ。
ちーの好きなマチュピチュを旅した時の話を聞いてね。
ありがとうね、ちー。


 

2013年9月15日。
彼女の四十九日に寄せて。

夏を追いかけて世界中を放浪する地球一周の旅を終え、季節は秋になった。
私はいま、草津温泉のとある老舗旅館に厄介になって、働きながら旅でぼろぼろに日焼けした肌を癒しているところだ。

 

エトランゼ-別館--草津の湯畑



がん患者である自分が社会の中で働くというのは、なんだか不思議な感じがするのだが、この病気との付き合いも9年目となり、長期的生存期の真っ只中で、自分のやるべきことをやりながら先を見据えて生きていかねばならない段階に来ているのだろうと思う。
本来ならもっと早くこの段階に到達していなければならないはずなのだが、私は人より少し道草を食う性格らしい。

20歳で発症し、21の時に骨移植のオペを受け、今年ついに30歳を迎えたわけだが、自分が三十路を迎えることなど、9年前の今頃はちっとも考えられなかったことであり、ありがたい話である。
しかし同時に、亡くなっていった戦友たちのことを想わずにはいられない。
7月の末、またひとり、大事な戦友を失ってしまった。
今はまだ彼女のことを書くには日が浅すぎるような気がして、言葉をつむげないでいる。
喪失感は未だ薄まらない。
旅の中でいくつものサヨナラを経験して、少しは強くなったかしらと思っていたが、やはり私はいつまで経っても"サヨナラが苦手な旅人"のままだった。

軟骨肉腫はオペ後10年経っても再発転移の症例があり、当面がん患者卒業は見込めない旨の判断を、先の検診の際に主治医より聞いているため、まだまだこのままがん闘病の延長戦は続いていくことが予想される。
しかしこれからは、昔の刹那的な生き方から脱却し、少しは先を見据えた生き方を模索しなければ。
来年、そして再来年の自分のために、いま何ができるかを考えながら生きていきたい。
そろそろ保険にも入れる頃合いだし、当面住む場所を得るために、貯金もはじめないとならない。

2週間連続勤務が続いたくらいでへこたれていられないし、人手不足で連休が削られたくらいで弱音を吐いてばかりもいられない。

社会の中で足を踏ん張って行きていかないと。

 


 エトランゼ-別館--連勤が2週間続いた後の残骸  エトランゼ-別館--ご褒美スイーツ

 



なにはともあれ、本日からがん患者9年生。
このセカンドバースデーを祝して、今日は少しばかり贅沢に時間を過ごすことにしようと思う。

ありがたいことに今日はひさしぶりの休み。
二度寝から起きたら足湯に出かけて、お気に入りカフェでスイーツをいただいて、のんびりと旅行雑誌でも読めたなら、この上なく最高の一日だ。