映画じゃなくて原作のほうですが。


映画、見たいなあって思ってたんだけれど、原作が文庫が出てるらしいっていうんで先に読んじゃいました。


すごいっすね。ここまで容赦なく負の連鎖で書かれた物語って久しぶりにお目にかかった気がします。エクスキューズなしに人の負の部分だけを淡々と描いていく。負が負を生み出す。いやあ、すごいすごい。


まったく救いのない話であるにも関わらず、この物語が多くの読者を獲得したのは、その負の連鎖がもたらす救いのなさに爽快さを感じるからではないでしょうか。人間だもの。悪魔のようなことをしながら、言いながらも、どこか温情を感じるような一面を見せてもいい。実際、「こんなことしちゃったけれど、この人にはこういういい面もあってさ」というくだりも出かかるのだけれど、それを後の本人の告白でことごとくつぶしていく。すべてを負へ。偽悪へと落とし込んでいく。


いやあ、気持ちいいっす。


正義の人がふたりばっかり出てきます。でも、不思議なほど彼らに共感することはない。むしろうっとうしく、余計なことはしないでくれとすら思ってしまう。その希望どおり、彼らの願いは叶うことなく最悪の結末を迎える。


すっきり。


映画「プレシャス」のような悲惨な物語に希望を感じ、救いのない負の連鎖の物語に爽快さを感じ、で、正義をアジる義民の物語にはうさんくささを覚える。人間ってそういうものみたいです。







やっぱ出来がいい作品ってえのはいいもんです。あ~、楽しかった。


星ひいきとしてはなんなんだけど、月はえらいっすね。みんなそこそこ歌えるし、群舞はそろってるし。イケコさんの微調整もあったみたいだけれど、イマイチわかりづらかった物語のアナもすんなり飲み込めて。仕上がりとしては初演を上回った気がします。初演ヲタが言うんだから間違いないと思う。ハハ。


れおんのショーブランがとても好きでした。SになりそこねてドMなっちまった敵役。恋も革命も良かれと思ってやったことなのに、すべてが裏目に出て、かわいそうにねえって頭をなでたくなるショーブランだった。


今回、最初に見たのはまさお版だったんですが、あれなに? 抱腹絶倒。革命の闘士っていうより、シェークスピアに出てくるいたずら好きの妖精みたいでした。マルグリットへの横恋慕もギロチン大安売りも、すべてが彼のいたずら。なので、振られても、スカピン軍に負けてもちっともかわいそうじゃない。星のときは泣きながら見た場面で笑っている自分にきづいて、まさおすげえと思いました。


なんだか、シンバル打ち鳴らすお猿さんのおもちゃみたいだったし。


みりおのショーブランは「ファウスト」のメフィストフェレス。神と賭けをして、この世を滅ぼすためにやってきた誘惑の悪魔。革命で世界を壊そうとしているぐらいの悪魔。かわいい顔してさあ、すごいよね、みりおも。「マダムギロチン」で群集を扇動している彼女の姿には鳥肌が立ちました。改めて、間違いなくセンターに立つ人だと思いました。


遅ればせですが、きりやん、おめでとう。好評だった初演をすぐやるっていうのはハードルの高い作業だっただろうけれど、腕のよさで乗り切った感じがしました。前半はイマイチ迫力不足かなあと思わないでもなかったのだけれど、「栄光の日々」でためにためていたものを全部ぶちまけてくれた。すごいね。あそこのために抑えてたのかあって思ったくらいです。


蒼乃さまは遠慮がないのがいいです。それが最大の彼女の武器かもしれない。特に最後のデュエットダンス。本当に遠慮ないよね。どかーんとぶつかって、好き放題踊る。でも、それが気持ちいいものに見えるのだから、きりやんとの相性がいいということなのでしょう。


腰りゅうのロベスピエールとか綾月せりのピポー軍曹とか月は脇も魅力的な人がそろっていてよいなあと思います。


でにマックス号泣ポイントはマリーの「殿下・・・」。これは初演と変わらず。そういえば、星の殿下はとんでもないことになっちゃったけれど、月の殿下はすごいうまかった。どうかすくすく育ってください。






チラシに「脚本・鈴木哲也」とあるのを見て、へ~、コクーンもついに本から作り直すんだあって思ったのが2ヶ月ぐらいまえのこと。


いや、ぜんぜん悪くないです。ほころびがないわけじゃないけど、全部通すとこうなるのかあとよくわかったし、ラップも何を言っているかよくわかんないというところも含めて竹本と受け取れなくもないし、けなげな子役ちゃんたちには号泣したし。


最後の5分さえなければ、「今年のコクーンも面白かったです。」って絵日記に書けそうだった。


なのに。ねえ、あのアジテーションはなに?


言葉で説明しちゃうくらいなら、なんでわざわざ芝居をつくったわけ? 何のために2時間半も芝居を見てきたわけ?舞台に向かってトイレットペーパー投げたくなりました。


もしかしてそれを期待してた?>いとうせいこう。


あと、歌舞伎ってあんまりわかりやすくないほうがいいんだなと思いました。わかりやすいっていうことは、今の価値観に置き換えてしまうということだったりするわけで、今の感覚では理解しきれないものを、音や衣裳や装置やいろんなものでなんとなく伝えてしまうのが歌舞伎なんじゃないかと思うので。


置き換えてしまうと零れ落ちてしまうものがたくさんある。そこにこそ、歌舞伎の妙味はあるんじゃないだろうか。


とってつけたようでなんですが、七のおぶんがとてもよかったです。女形でもなく、けれど決して女優っぽくなく。大根なんだか天才なんだか、相変わらずふり幅の大きい七です。