Association Between Cataract Extraction and Development of Dementia

Cecilia S Lee , Laura E Gibbons , Aaron Y Lee, Ryan T Yanagihara, Marian S Blazes , Michael L Lee, Susan M McCurry , James D Bowen, Wayne C McCormick, Paul K Crane, Eric B Larson

JAMA Intern Med. 2021 Dec 6;e216990

【重要性】
高齢者にとって視覚機能は重要である。白内障手術など、視力を維持するための介入は、認知症リスクを修正する可能性がある。

【目的】
白内障手術が高齢者の認知症リスクの低減と関連するかどうかを明らかにすること。

【デザイン、設定、参加者】
この前向き縦断的コホート研究は,Kaiser Permanente Washington の認知機能が正常な会員から無作為に選ばれた,進行中の人口に基づくコホートである Adult Changes in Thought 研究のデータを解析したものである。研究参加者は、登録時に65歳以上で認知症がなく、認知症(全原因、アルツハイマー病、またはアルツハイマー病と関連した認知症)が発生するまで2年ごとに追跡調査された。

【暴露】
白内障手術が主な対象であった。白内障または緑内障の診断と手術に関するデータは、電子カルテから抽出された。認知症に関連する危険因子と健康関連変数の広範なリストは、研究訪問データおよび電子カルテから入手した。

【主要評価項目】
主要評価項目はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (Fourth Edition)の基準で定義された認知症であった。多変量Cox比例ハザード回帰分析は、主要アウトカムで実施した。健常者バイアスの可能性に対処するため、手術の確率を組み込んだ加重限界構造モデルを使用し、認知症と視力回復しない緑内障手術との関連を評価した。

【結果】
参加者:3038人
最初の白内障診断時の平均[SD]年齢、74.4(6.2)歳、

女性1800人(59%)と男性1238人(41%)、

2752人(91%)が白人
 

23554人年の追跡調査に基づいて、教育年数、白色人種、喫煙歴を制御し、アポリポ蛋白E遺伝子型、性別、白内障診断時の年齢層で層別化すると、
 

白内障手術は

手術をしない参加者と比較して

 

認知症のリスク

(ハザード比、0.71;95%CI、0.62-0.83;P <0.001)

 

と著しく減少することが示された。
 

潜在的な交絡因子の広範なリストを調整した後、限界構造モデルでも同様の結果が得られた。

 

緑内障手術は認知症リスクと有意な関連を示さなかった

(ハザード比、1.08;95%CI、0.75-1.56;P = 0.68)。

 

アルツハイマー型認知症の発症についても同様の結果が得られた。

【結論と関連性】
このコホート研究により、白内障手術が認知症発症リスクの低下と有意に関連することがわかった。今後の研究で検証されれば、白内障手術は認知症発症リスクのある高齢者において臨床的な関連性を持つ可能性がある。
 

 

【感想】

眼の病気で命にものすごくかかわる病気というのは多くないと思いますが、目が見えなくなるというのは著しくQOLを低下させる原因となります。白内障手術をして視力を保ち様々な刺激を得ることで認知症の発症リスク抑えることができるいう発想は今までなく大変驚きました。これから超高齢化社会になり認知症の患者の増加が予想されます。外来でも目の見えかたについては今後時折患者さんに聞いていこうと思いました。

 

Association of Social Support With Functional Outcomes in Older Adults Who Live Alone

 

Sachin J Shah , Margaret C Fang , S Rae Wannier , Michael A Steinman , Kenneth E Covinsky

 

JAMA Intern Med. 2021 Nov 15. Online ahead of print.

 

【重要性】
一人暮らしの高齢者は、健康状態が悪くなるリスクがある。社会的支援が特に健康状態の急激な変化に直面したときに、一人暮らしのリスクを軽減するかどうかは、十分に報告されていない。
 

【目的】
一人暮らしで健康被害を受けた際に、社会的支援がその被害を軽減するかどうかを評価する。
 

【デザイン、設定、参加者】
今回のHealth and Retirement Study(登録2006年3月~2015年4月)の縦断的前向き全国代表コホート研究では、地域で一人暮らしをしている65歳以上の高齢者で、日常生活動作(ADL)と手段的ADLを自立して行うことができる4772人を、2018年4月まで隔年で追跡調査した。統計解析は2020年5月から2021年3月までに完了した。

【暴露】
社会的支援(例:必要に応じて身の回りの世話をしてくれる特定の親戚や友人)、健康上のショック(例:入院、がんの新規診断、脳卒中、心臓発作)、2つの暴露の間の相互作用(乗算および加算)

【主要評価項目】
ADL依存症の発生

介護施設への長期滞在(30日以上)

死亡

 

とした。

【結果】
一人暮らしの高齢者4772人

(年齢中央値[IQR]、73歳[68-81]、3398人[71%]女性)

 

ベースライン時に1813人(38%)が支援を確認できず、3013人(63%)が調査期間中に健康上のショックを経験していた。

 

サポートは、2年後の介護施設での長期滞在のリスクの低下と関連していた

(予測確率、6.7%対5.2%、P = 0.002)

 

 

健康上のショックがなかった場合

サポートは介護施設の長期滞在とは関連しなかった

(2年間の予測確率、1.9%対1.4%、P = 0.21)

 

健康上のショックがある場合には、

サポートは介護施設での長期滞在のリスク低下と関連していた

(2年間の予測確率、14.2%対10.9%、P = 0.002)

 

サポートは、ADL依存症や死亡の発生とは関連しなかった。

 

【結論、適合性】
一人暮らしの高齢者を対象としたこの縦断的コホート研究では、社会的支援は、健康上のショックを受けた際に介護施設に長期滞在するリスクの低下と関連していた。
 

【感想】

最近入院する患者で介護保険の申請もしたことのないような独居の高齢者が多いため気になって論文をよんでみました。

入院するともれなくADLが低下し、退院先は施設であったりまたは自宅であっても周囲のサポートが必要となることが多い印象です。

また患者自身がADL低下に関しての実感がなく、退院先として施設を提案するも自宅への退院希望される方も多いです。

 

自分の父親は体が弱ってもなるだけ自宅で生活したいとの希望があります。今のところ大きな健康問題はないようですが、何か健康問題が起きたとき自宅での生活を少しでも長く生活できるようにサポートできるよう実家の近くに住んでいたほうがいいのでしょうね・・

 

Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibition in Acute Myocardial Infarction

 

Marc A. Pfeffer, M.D., Ph.D., Brian Claggett, Ph.D., Eldrin F. Lewis, M.D., M.P.H., Christopher B. Granger, M.D., Lars Køber, M.D., Aldo P. Maggioni, M.D., Douglas L. Mann, M.D., John J.V. McMurray, M.D., Jean-Lucien Rouleau, M.D., Scott D. Solomon, M.D., Philippe G. Steg, M.D., Otavio Berwanger, M.D., Ph.D., et al., for the PARADISE-MI Investigators and Committees

 

N Engl J Med. 2021 Nov 11;385(20):1845-1855.

 

【背景】

症候性心不全患者において、サクビトリル-バルサルタンは、アンジオテンシン変換酵素阻害薬よりも効果的に心血管疾患による入院や死亡のリスクを低減することがわかっている。なお、急性心筋梗塞患者におけるこれらの薬剤の効果を比較した試験は行われていない。

 

【方法】

左室駆出率の低下,肺うっ血,またはその両方を合併した心筋梗塞患者を,推奨される治療に加えて,サクビトリル-バルサルタン(サクビトリル97 mg,バルサルタン103 mgを1日2回投与)またはラミプリル(5 mgを1日2回投与)のいずれかに無作為に割り付けた。主要評価項目は,心血管疾患による死亡または心不全の発生(外来で症状のある心不全または入院に至る心不全)のいずれか早い方とした。

 

【結果】

5661名の患者が無作為化され、

2830名がサクビトリル-バルサルタン投与群、

2831名がラミプリル投与群に割り付けられた。

 

中央値22ヵ月の間に、

主要アウトカムイベントが発生したのは、

サクビトリル-バルサルタン投与群 338例(11.9%)

ラミプリル投与群 373例(13.2%)

(ハザード比、0.90、95%信頼区間(CI)、0.78〜1.04、P = 0.17)

 

心血管疾患による死亡または心不全による入院は,

サクビトリル-バルサルタン群 308例(10.9%)

ラミプリル群 335例(11.8%)

(ハザード比0.91,95%CI,0.78~1.07)

 

心血管疾患による死亡が

サクビトリル-バルサルタン群 168例(5.9%)

ラミプリル群 191例(6.7%)

(ハザード比0.87、95%CI、0.71~1.08)

 

あらゆる原因による死亡が

サクビトリル-バルサルタン群 213例(7.5%)

ラミプリル群 242例(8.5%)

(ハザード比0.88、95%CI、0.73~1.05)

 

有害事象により治療を中止したのは,

サクビトリル-バルサルタン群 357例(12.6%),

ラミプリル群 379例(13.4%)

 

【結論】

急性心筋梗塞患者において、サクビトリル-バルサルタンは、ラミプリルと比較して、心血管疾患による死亡および心不全の発生率を有意に低下させなかった。

 

【感想】

心血管疾患による入院や死亡率を減らす効果があり発売から1年以上経過しておりそろそろ使おうかなと思っていたところでしたけどね。検討していた患者がちょうどこのように心筋梗塞後の慢性心不全の患者であったんですが、この論文をみると今までのACE阻害薬で十分効果がありそうです・・・

 

この薬の効果は期待しているのですがどのような患者に投与するのが望ましいかこのような研究が今後も様々でることを期待します。