彼が愛したケーキ職人(原題名:The Cakemaker '18年 テアトル梅田) | Que amor con amor se paga

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やっとかけた~

この映画観て、無性にケーキやクッキーが食べたくなったのう~

イスラエルとドイツの合同映画なのに、なぜタイトルが英語(爆)と思うんですがqqqqq

監督自身がゲ〇なので、ゲ〇が題材ですが、それ以上に思ったのが、

身内優先主義で、大事なものを見失っていないかという映画の主題、です。

ゲ〇でも、親族の繋がりっていいモノだぞ~ホントに仲良くなったら全員身内と語りまくる男と、人は所詮一人、本当に判りあえる人は、性別年齢問わず、 一生のうち片手に収まる人数が居ればいい、という人は、人生概念違うじゃないですか。

それを描いた映画です。

そんなワケで、予告編はこちら、あらすじいってみる。



ベルリンで評判の小さなカフェ『クレデンツ カフェ&ベーカリー』を営むトーマス(ティム・カルクコフ)は、腕のいいケーキ職人。

馴染み客のオーレン(ロイ・ミラー)が、トーマスの店で注文するのは、黒い森のケーキとお土産のシナモンクッキー。

ドイツとイスラエルの合弁会社で働くオーレンは、ある日トーマスに、6歳になる息子イタイ(タミール・ベン・イエフダ)の誕生日プレゼントを何にすればいいか相談した事がきっかけで急接近。
1年後、2人はトーマスのアパートで暮らす様になる。

それから暫くして、オーレンは、いつもの様に妻アナト(サラ・アドラー)の待つイスラエルへと戻っていった。
トーマスには、1カ月後戻ってくると言い残し。
トーマスの部屋に残されたのは、オーレンが置き忘れたロッカーキーと、家族への手土産のはずのシナモンクッキーだった。

だが1カ月半たっても、オーレンはベルリンに戻ってこない。
トーマスが何度、携帯の留守電にメッセージを入れても返信もなし。
意を決してトーマスがオーレンの勤めている会社に行き、忘れ物を届けようとすると、受付嬢から聞かされたのは、オーレンが1カ月以上前にエルサレムで事故に遭い亡くなっていた事実だった…。

一方、エルサレムにあるカフェ『カフェ・パアモン』

夫オーレンの死亡手続きを済ませたアナトは、ユダヤ教の戒律に従った事を示す食物規定(コシェル)を所得し直し、カフェを再開する。

そこに客としてやってきたのはトーマスだった。

1度目はしり込みして帰ってしまったトーマスだったが、2度目はアナトから『まだ、この街で職を探してるの?』と聞かれ、雇ってもらう事に。

コシェルの規定上、ゴイ(非ユダヤ人)であるトーマスは、皿洗いや掃除、野菜を切るなろ簡単な下ごしらえしか出来ない。

オーレンの兄モティ(ズハル・シュトラウス)は、律法主義のユダヤ人で、店でトーマスを見つけるや否やドイツ人を雇ったのかと怒り、イタイには、あいつの作ったものは食うなと刷り込もうとする始末。

エルサレムの街に出れば目が合った軍人が睨みつけ、気晴らしにプールに行っても、監視の職員に舌打ちされる。
亡きオーレンや妻のアナトは、自分を受け入れてくれるが、他の人間がそうではない肩身の狭さをトーマスは感じていた。

ある日、トーマスは厨房でシナモンが入った瓶をみつけ、誕生日を迎えるイタイの為にサプライズでクッキーを焼いてあげた。

アナトやイタイは喜ぶが、モティはユダヤ人でないトーマスがオーブンを使った事に激怒。
バレたら店の営業が出来なくなってしまうから捨てろと、怒鳴り散らし出て行ってしまう。

思いもよらない文化の違いに直面し、情熱と一方向の思いだけでは何も通じないことを知らされ、自分の浅はかさと後悔にさいなまれるトーマス。
その日は黙って店を後にした彼だったが、残っていたクッキーを息子と共に食べたアナトから、食物規定にかからないように、私がオーブンを使えば大丈夫と提案。
クッキーは店の定番メニューとなり、アナトの店は繁盛しだした。

運命に導かれるように引き寄せられたアナトとトーマスだったが、同じ人間を愛していた事に気付くのに、それほど時間はかからなかった…

以下ネタバレです

映画はトーマスが、クッキー生地をこねて、のばすシーンの手元がクローズアップされる所からはじまります。

普段はクッキー食べないんすが、この映画観て無性に『クッキー食べてぇぇぇ~』となるシーンが出てくるんですよねぇ。

イタイは学校で、いじめられていて、映画の途中で学校から居なくなっちゃうのですよ。

普段店には、アナトの妹ダナ(タゲル・エリアフ)が手伝いに来ているのですが、彼女がイタイを迎えに行ったらいなかった。

そこでアナトと、モティが探しに行って、店がトーマスだけになってしまう。

そんな時、オッサンの客が『カプチーノまだか~』と窓際席から怒鳴りよるわけです。

そこでトーマスがカプチーノ入れて、とっさの判断で、焼きあがったばかりのクッキーを、コーヒーの受け皿に乗せて出す。
その手がクローズアップされる。

おお~いかにも欧州なザックリクッキーたべてぇ~
となる、ビジュアル。

で、肝心のイタイは家族総出で探したにも関わらず見つからず、真夜中にお店に帰ってくるんです、トーマスがもう店しめようかな~と掃除してた頃に。

そこでトーマスはイタイに、クッキーのデコレーションを手伝わせて、アナトはそれを影で見ているという。

あんまりにもトーマスの家族ウケがいいので、モティは渋々ながらユダヤ人用のいいアパートをトーマスの為に提供するわけです。

モティ自身がトーマスを気に入ってやってるのでなく、彼は『律法の教えに則り、家族にウケがいい人に親切にしている』だけ。
それは薄々トーマスも判っている
だから安息日の時にウチの家に来いとモティから言われたってトーマスは行かない。

アナトは、そんなトーマスの心境を察して『うちの家は、私とイタイしかいないから』と言ってディナーに誘うのです。

すると、トーマスは安心してオーレンが気に入っていた『黒い森のケーキ』を持っていくんです。
が、KYな息子が余計な事を言うんですよ。

イタイはトーマスにも家族がいて当然だと思って『お父さんお母さんいるの?』って聞きおるんですよ。
そういう風に見えるんでしょうねぇ。
まぁ子供のうちから、こういう事を根掘り葉掘り聞かない子供に育てる+余計な事を吹き込まない事も、将来、うっせーBBAやジジイにならない為の第一歩だと思いますが。

トーマスは両親に捨てられて、パン屋をやっていた祖母に育てられたのです。
彼の腕前は祖母譲り。
自立心をもって行動する事もおばあさん譲りなわけです。

オーレンは、ユダヤ教の身内社会に育ってきたから『家族はいいぞ~』と生前トーマスにずっと語ってきたのだけど、そんなの、家族を亡くした、家族が居ない人からしてみれば、この人何言ってんの?というものなのです。

黒い森のケーキも、アナトはおいしいおいしいと食べているんですが、イタイは食べようともしない、モティが余計な事言ったのを気にしてるからでしょうねぇ。
アナトに『そんな事気にしちゃダメ』と言われて食べるんですけど、純粋な食べ物のおいしさよりも家族や戒律を優先してしまうのかと、トーマスはまたもや打ちのめされてしまう。

が、数日後、トーマスの作ったケーキはアナトの提案で店のメニューになるんですよ。

黒い森のケーキだけじゃなくて、アップルパイや、クグロフも。
こんな感じのモノがアナトは好きかなぁというのを感性のいいトーマスは、判っていて。

ハヌカ祭(ユダヤ教の清めの祭り)に、30人分、5種類のケーキの予約が来るという人気が出たのですが、好事魔のごとし。
コシェルの認定を取り消され、仕入れが出来なくなり、営業停止に追い込まれてしまう。

詳しくは描かれていないのですが、よろしくないと思っていた人もいたんでしょうねぇ。
繁盛しているのに、モティが『こんなに派手に営業してて、コシェル取り消されたらどうするんだ?』とアナトに言いに来るシーンがあるんですが、それなりに同業者から恨みもかっていたのだろうと思います。

モティもモティで、店にかかりっきりで、学校でいじめられているイタイの面倒を見なくなったアナトに不満は抱いていただろうし、トーマスを受け入れていた自分の母親でオーレンの母でもあるハンナ(サンドラ・シャーディー)の事も腹がたったかもしれません。

モティは、何か理由を作ってトーマスを家族という枠から追い出したかったんじゃないか、

と思うシーンがあります。

店がコシェルの認定を取り消された直後、モティは、アパートで新作メニューを作っていたトーマスに飛行機のチケットを渡すのです

今から4時間後の飛行機のチケットだ、1時間で支度をして、とっとと帰れ

自分の家族に踏み入られるのが限界だと言わんがばかりに、モティは突っかかるんですねぇ
おそらく彼は、アナトがお気楽にトーマスを受け入れた分、トーマスに反対する人を影で頭を下げて抑えていてくれたのではないでしょうか。

よくイベントとかする人が、おめでたい感覚で、自分の開いたイベントは、全ての人に支持されているとカン違いしているフシがありますよねぇ。
会場でも貸切らない限り、そんな事起こりえないし、実社会ではそんな話はありえない。

時が経てばコシェルの問題も解決したと思うのだろうけど、モティは自分の親族からの猛反対もあり、トーマスをとりあえずベルリンに返してしまう。

3カ月後、アナトはコシェルの認定は受けずに店を再開させてます(おい)

お客さんは、薄々トーマスが追い出されちゃった事は知ってて『あのケーキ食べられるの?』と聞いてくるのです、するとアナトは『彼が残し照れたレシピで作ってるから大丈夫、コシェル認定はないけどね。』と言います。

イスラエルに住む人の大半は世俗派の人なので、世俗派の口コミ客を獲得したら、モティみたいな人はいらんのでしょうなぁ。

そこに行き着くまでに彼女は、オーレンの遺品を色々と整理したりするのですが、その中からオーレンの携帯電話も出てくるのです。

オーレンの電話に入っているトーマスのメッセージから、オーレンがゲイだった事が判りショックを受けます。

実は、オーレンの事故は、アナトと大ゲンカして起こった事で、トーマスは、ハヌカ祭のケーキの予約を作っている時に知らされ、驚くのです。

オーレンは、カフェを開くと言ったアナトに、もうイスラエルに戻らない、ベルリンに恋人が出来たから、そこで暮らすし、離婚すると一方的に言ってきたことが原因で大ゲンカに。
離婚寸前の頃はイスラエルのホテル暮らしで、そこに戻る前に交通事故で死んだというのだ。

あれだけ家族はいいぞと言ってたのに?
オレにウソをついたんだ…
そんなアナトは何も知らないで、僕に好意を寄せてくれている…となると、トーマスもどういっていいのか、判らなかったかもしれないですよね。

映画のラストシーンは、アナトがトーマスのお店を訪ねていくのですが、お店から出てくるトーマスに声をかけられずじまいで、終わります。

なんちゅーか。
一番ズルいのって、オーレンじゃないっすか?

家族はいいぞ~親戚はいいぞ~と言いながら二股して、両方だけじゃなく親族も傷つけているんですから。

そんな男に限って、オレのおかげで、二人が出逢えたんだからいいんじゃない?なんてバカな事を言うんだと思うんですが。

反対に偉いと思ったのが、オーレンの母親のハンナ。

こんな事態が起こる事をすべて判っていて、受け入れている。
それにオーレンは甘えちゃぁいけないっすよね。

アナトは、トーマスと出逢った事で、家族以外にも人生概念が通じれば、信仰や食習慣を超えてわかりあえる人が、出来るという事が判ったのが財産だと思うのですよ。