ウォルト・ディズニーの約束('14年3月 松下IMPホール) | Que amor con amor se paga

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映画・本などのネタバレメインのブログです
日常で気になったコトや動画も載せてます。


原題名:Saving Mr. Banks


史実を知ってる人と、知らない人、どっちも楽しめますが

知ってるか知らないかで、見解が二分します。


知らないと、ディズニービジネスの思惑にハマっちゃって

あ~ハッピーエンドっていいな~・・・になるんだろう・・・と思うんだな

そういう観客を量産して、ディズニーは、あちこちの映画会社を買収しとるわけですが。


史実を知っていると、売れるからって何でもかんでも映画化すんじゃねぇよ、と
懐疑の目も出てくるのではないでしょうか。

私的には、仕事柄後者の目で見てました


本やドラマで感動したけど、映画になっちゃったら感動せぇへんかった~・・・という
映画を観てもうた・・・しくじった・・・という方

こうした映画ビジネスもあるわけっすよ。


予告編はこちら、あらすじいってみる。





時は'60年代

晩年のウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)は、長年娘のリリアン(デンドリー・テイラー)に約束していた事があった。

リリアンがすきだという『メアリー・ポピンズ』を映画化する事だった。


しかし現在英国に住んでいる原作者のトラヴィス(エマ・トンプソン)は、映画化に対し首を縦に振らない。

その交渉年数たるや

20年

トラヴィスの方が、資金繰りがつきてきたのを見計らい、ディズニーは、彼女をハリウッドに呼び寄せ、映画化権を買い取ろうとするが、
彼女はあれもこれもと難癖をつける。


その理由は、彼女の家族関係にあると睨んだディズニーは、彼女の生い立ちから映画化についてアプローチしていこうとするのだが・・・


邦題こそ、ディズニーっぽくなっとりますが、ディズニーは、脇役で、主役は『メアリー・ポピンズ』の
原作者のトラヴィスじゃぁないかと。

英米オスカー俳優を一つの作品で観れるというのは、そうそうないんですけどねぇ。

トラヴィスは、超マジメで、後から言ってることが最もだと判るのですが、映画ビジネスに関わるものからしてみれば、
何故彼女がそこまでして『メアリーポピンズ』を映画ビジネスから守ろうとしているのが、さっぱり判らんわけです。


ウォルト・ディズニーの会社の人間も、ディズニーが、招いた原作者+娘さんが気に入ってる本の
原作者なのでムゲに出来ないんですが、ここまでこてんぱんにされちゃうと、トホホなわけです。

ディズニーが『パメラさん』と呼ぶと

気安くよぶな~ヽ(`Д´)ノと言わんがばかりに『苗字でよべーヾ(。`Д´。)ノ』だからなぁ

脚本家のダクラティ(ブラッドリー・ウィットフォード)も脚本ポイっと窓の外に投げられちゃう。

作曲家のリチャード(ジェイソン・シュワルツマン)、ロバート(B・J・ノヴァク)シュワルツマン兄弟が、
毎日ご機嫌斜めのトラヴィスをなだめています。

この兄弟は、『メアリー~』でオスカー賞を受賞して、次の『チキ・チキ・バン・バン』にキャリアを
つなげていくわけです。

トラヴィスは、後にこの映画を『歌以外に評価するところはない』みたいに言っていますが、
映画の中ではキャスティングでも大モメしています。

テーマを歌ったジュディ・アンドリュース(ヴィクトリア・サマー)と、
煙突掃除の大道芸人・バート役のディック・ヴァン・ダイク(クリストファー・カイラ)以外は
彼女はウンともスンとも言ってないんじゃないか?


ディック・ヴァン・ダイクといえば、この作品の『チムチムチェリー』よりも『チキ・チキ・バン・バン』の
空飛ぶ車の発明おじさんの方が有名かもしれませんねぇ。


ディズニーはというと、油雑巾に火としかいいようがないコトばかりしかしてないんですよ。

彼女に、『こうすりゃ~いいでしょ~』という自己流のおもてなししかしてないから、
そりゃーつきかえされて当たり前。


当時のコメディやファンタジーは、『そこにキテレツなアニメいれる?』というアニメをムリヤリ
ハメコミ合成させた映画やTVも横行してたわけで。

『アタシの話にアニメを入れるな』とトラヴィスはいってるのに、ディズニーは全くきかずペンギンのアニメなんか
いれとるし+そのお詫びにディズニーランドにご招待いたしましょう~+群がってくる子供たちには
前もって書いたサインくばっとるし・・・


商売ッ気出てて、トラヴィスに毛嫌いされても、文句いえんよ・・・という所なんですねぇ。


・・・とにかくトラヴィスは、映画関係者を、けちょんけちょん、ボロっかすに言いまくるわけです。

ですが、それには哀しい理由があるというのは、現代の彼女と、過去の彼女(アニー・バックリー)の
映像がはさまれることで、説明されていきます。


『メアリー・ポピンズ』の土台になっていたのは、彼女の人生だったからです。

オーストラリアのアイルランド系移民の父親ロバート(コリン・ファレル)は、
家族には厳しいのにアル中。これが『メアリ~』のバンクスのモデル。

ロバートは酒がやめられず、ろくでなしになり、そんな夫をみて、錯乱した妻(トラヴィスの母)・マーガレット
(ルース・ウィルソン)はトラヴィスの前で自殺を図ろうとする。


家族が絶望の果てにいたその時、やってきたのは、メアリー・ポピンズそのもののエリー伯母さん(レイチェル・グリフィス)

レイチェル・グリフィス、
『ステップ・アップ』ではチャニング・テイタムの才能を見出す校長、
『シャンプー台の向こうへ』では
離れ離れになった夫婦お互いの運命のソウルメイトと、物語のキーパーソンになりますねぇ。


映画できたよ~といって、最初はトラヴィスに見せるわけです。


トラヴィスは不満そうな顔をしています、そこから号泣するのですが、嬉しくて・・・というワケじゃぁないですねぇ。

本当に自分の事を判ってくれる映画会社に救って貰ったという概念がなかったら,後で、ああならないので。


彼女は、ディズニーとは、これ以来絶縁してるのですが、英国に怒って帰ってしまう時に、
会社つきのリムジン運転手ラルフ(ポール・ジアマティ)には、いいコトをいいます。

彼には車椅子の娘さんがいます。

そんな娘さんを思いやり、過去の偉人のリストを挙げ、どんな困難が待ち構えていても、
不可能はありませんよ、と励ますわけです。


ディズニー自身の横暴さ、映画ビジネスのあり方は、嫌いだったけれど、
そこに関わる全ての人が嫌いというわけではなかったのですね。


ディズニーは、彼女が怒ったら困るからという理由で、完成した映画は、彼女の意向に背くものだった
(アニメは入っている、適当なキテレツな言葉も入っている、原作と違う面もぼろぼろある)のに、
映画化権を買い取ったからこっちのものだと、勝手に上映しちゃうわけです。


ディズニーに限らず、映画ビジネスでは往々にしてこんな事はあります。


『ブレードランナー』、
『マイノリティレポート』
『トータルリコール』
『ペイチェック・消された記憶』
数々のSF傑作を生み出したフィリップ・F・ディックは、自分の作品が映画化される度に
モメていたけれど、モメる根本にあったのは、この映画と同じ様に


他人が映画化する事では巧く表せない、原作者の心の痛み、そっとしておいて欲しいものも
あるのではないでしょうか。



ディズニーが、『メアリー・ポピンズ』を映画化したときの反省点を踏まえて作った映画って、
ある意味
『キッド』じゃないかな、とも思います。





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