新チームが始まりました。意識の高い2年生が集まったこの代、練習にも熱が入り今まで彼らが対戦した事もないチームとの練習試合をいくつもこなたことで対戦チームから多くのことを彼らも学んでいきました。


 夏休みも終わり9月に入った頃、同じ教科の教員が体調不良で病欠となり、代用教員を探しているので誰かいないかと学校長から打診があり、私は一人の若者に連絡しました。


 彼は前任校野球部で話題となった右腕の兄。自分の高校野球が終わるとすぐにコーチを引き受けてくれました。卓越した野球理論と何より子供に寄り添う姿は印象的でした。


 その彼が大学4年の時、母校実習で同校を訪れた時は指導教官もやらせていただきましたが、事務能力の高さには驚かされていました。実習期間もグランドでの野球部指導を担当してくれました。大学卒業後は、教員を目指しアルバイトの生活をしていたようです。


 その彼に「今日学校に来てくれるか?」と電話したところ(何か騒々しい金属の玉の音がしていましたが、気にせず話しかけました。)理由も聞かず「伺います」という返事。


 彼の地元から2時間はかかるこの地に初めて彼はやってきました。(とりあえずスーツは着て来るように伝えました。汗だくのスーツ姿でやって来たことを今でも鮮明に覚えています。)


 校長面接後、グランドにやってきた彼が言ったのは、「来週からお世話になることになりました。よろしくお願いします。」でした。「特任の代用教師」としての採用だったのです。つまり正規任用に準じるものです。教科指導だけではなく学年に所属し公務も担当するということでした。


 もちろん部活も担当出来るという事で、彼以上に私は喜びました。


 「急転直下」まさにこの言葉がぴったりと当てはまる事態でしたが、すでに大学を卒業している彼は様々な証明書を取るために大学に訪問したり、健康診断を受けたりと奔放する日々を過ごし、翌週から勤務を始めました。実家からの通勤は2時間。朝5時代には電車に乗り、夜9時に退勤(配属された学年は、所謂会議好きの学年だったようで。)

の生活が始まりました。


 野球部には初日から参加してもらいました。初日の練習終了後、ヤンチャな2年生エースが大粒の汗をかきながらつぶやいた一言を私は聞き逃しませんでした。「二人はいらねぇ。、。」しかし、その表情はなぜか嬉しそうに見えたのは私の勝手な解釈かもしれません。


 そして新人戦。ベスト8まで進出しました。


(感謝22に続く)