春大会終了後、夏大会からは指揮を取ることになり、組み合わせ抽選の結果、初戦から強豪との戦いとなりました。場数を踏んでない三年生投手にとって、初回から猛攻は大変なプレッシャーとなったと思います。


 3回10点差コールド負けが見えて来たノーアウト満塁。センターをピッチャーの真後ろに置き、内野のすぐ後に外野手を2人、前進守備の内野手を6人で守る(キャッチャーまで含めると7人ですね。)布陣を指示。


 ピッチャーは、この春投球練習を始めた2年生に交代です。相手チームはこの布陣に驚いたと思いますが、もっと驚いていたのはベンチを含む自軍の選手たちでした。


 ノーアウト満塁、一点取られたらゲームセットです。任された2年生投手は開き直って腕を振るしかありません。


 最初のバッターが放ったボールは、誰もいないセンターにフラフラと上がりました。「駄目だったか!」と思った瞬間、レフトから猛ダッシュでボールを追いかけた3年生が好捕しワンアウト。


 レフトはガッツポーズを繰り返しながら守備位置に戻って行きました。ベンチは大騒ぎです。


 次打者のピッチャーゴロをホームゲッツーで10点差コールドを免れベンチに戻って来た選手たちの笑顔は忘れません。(2年生ピッチャーは顔面蒼白になっていましたが。)


 驚いたことに、ベンチに戻ってくる選手たちを迎える控えの2年生が泣いていたのです。「これでチームは変わる」と思った光景でした。


 結局その後ビハインドを縮めることが出来ずに5回コールドとなりましたが、これで引退の三年生も最後はやり切ったという笑顔を見ることが出来ました。


 選手の中には「ハラハラドキドキしたけど、野球がこんなに楽しいと思ったことがなかった」と言った子がいます。野球部が確実に一歩を踏み出したと確信した言葉でした。


 そして新チームがスタートしました。


(感謝21に続く)