先日、たまたま懐かしい歌のタイトルを目にしました。
その瞬間、胸がキューんと締め付けられるような切なさと温かさと愛おしさと何とも言葉に表せないような感情が一気に溢れてきたのです。
その曲名は
chicago(シカゴ)の
"Heard to say I'm sorry"
(日本語タイトルは、"素直になれなくて")
調べてみると、何と、1982年に発表された曲なのだそうです。
イントロがとても美しく切なげで、初めて聴いた時、心が震えたのを覚えています。
そうです。
この曲は、"忘れられない人"から贈ってもらった、胸の奥に大切にしまっておいた曲なのでした。
恋とは突然落ちるもの
というのを聞いた事があるが、まさか自分が海外で"落ちてしまう"とは…
それは、とある国のホテルに宿泊した際、とてもフレンドリーで親身に世話をしてくれた男性。
以下、彼の名前を仮に"アダム"とする。
「彼女、日本から来たんだって!」
最初に私に対応してくれていたスタッフが彼に紹介してくれた。
以前このホテルに長く泊まって彼らと仲良くなった日本人の学生さんがいたらしく、その方と同じ国から来たとの事で、大変歓迎してくれたのだ。
「僕の名前はアダムです。よろしくね。」
そして、
「よかったら、記念に一緒に写真を撮りませんか?」
と自ら率先して一緒に撮影してくれた。
名前を忘れてはいけないと、携帯電話のメモに入力しようとしたら、
「よかったらこれ、いつでも遠慮しないで連絡して」
と言って、彼の連絡先を私の携帯電話に入れてくれたのだ。
うーん、スマート![]()
「後でその写真、僕に送って貰ってもいいですか?」
その日の夜、
「あっ!そうだ、一緒に撮った写真送らなくては」
と、思い出し、彼に送信した。
たとえホテルマンといえども警戒したほうがいいのかなとしばらく躊躇ったのだが。
それ以上に何だか根拠のない信頼感と安心感があったのだ。
"良い写真だ!ありがとう!"
返事が来た。
何だか嬉しかった。
その日から、観光して感動した場所をシェアしたり、その国のオススメを教えて貰ったりと、やり取りが続いた。
ほんとに個人的にこんなにやり取りしていいものだろうか?
相手はサービスの一環とはいえ、他にもゲストは沢山いて忙しいから迷惑なのでは?
と迷ったが、私が連絡しない日は向こうから来るし、私がホテルをチェックアウトした後も彼がノリノリで楽しそうにやり取りしてくれるのが嬉しかった。
そして、いよいよその国を離れる日、
「いよいよ帰るんだね。寂しくなるね。道中気をつけてね。僕たちは、ずっと友達だよ。」
何とも嬉しいメールが来た。
こんなことある??
そこからだ。
何と私が日本に帰国してからも彼からの連絡は続いた。
ほんの一ゲストにそこまでサービスしてくれるの?
嬉しい反面、
このサービスに甘え続けていては相手さんに迷惑だ
との思いとで揺れた。
と、同時に私の中にある感情が芽生え始めていることに気づいた。
そう、"落ちてしまっていた"のだ。
思い切って告白すると、受け入れてくれ、お互い同じ気持ちであることを確かめ合った。
その後はチャットだけではなく、電話で話す事も多くなった。
"英語の上達には、海外のボーイフレンドを作るのが一番だ"
というのをよく聞くが、まさかまさかそんな機会なんてあるはずがないとたかをくくっていた過去の自分に伝えたい。
「そのまさかがやって来ますよ〜!」って😄
そこからの日々は、それはそれは夢のようだった。
何気ない日常の事を報告し合ったり、様々な美しい景色の写真を送ってくれたり、
そして、あの、"Heard to say I'm sorry"
仕事で失敗して落ち込んでいた時には、
「一つ扉が閉まってしまっても、また別の新しい扉が開くからそれを見逃さないように前を向いて」
なんて言葉をかけてくれたり。
知れば知るほど、彼は優しくて、努力家で優秀で向上心があって、ロマンチストで、とっても素敵な人だった。
そして、そんな日々を経て私達は、ついに再会の約束をしたのだった。
しかし、半年ほど経ったある日。
突然、
彼から急に冷たい言葉が飛んできた。
何故??
色々振り返ってみても何か悪い事を言った覚えはない。
全く見当もつかなかった。
「あなたは本当にアダムなの?」
と返信しても
「ああ、そうだよ。アダムだよ。」
突然人が変わってしまったようで、怖くなった。
あの甘く優しい日々が音を立てて崩れてしまった。
ここでついに"サービス終了"という事なの?
と、いうか、やっぱり単なるサービスだったの?
…初めから私の一人相撲だったのだろうか。
目の前が真っ白になった。
何か手がかりはないかと彼のSNSを見てみると、過去の投稿が全て消えていた。
きっと何かあったのだ。
私には言えない何か。
あそこはとても景色が綺麗なんだよ、今度連れて行ってあげたいな
あそこの料理は美味しいよ、一緒に食べに行こうね
…
沢山の未来の約束が積み木のようにガラガラと崩れ落ちた。
"時をかける少女"という映画で、確か、恋人が未来から来ていたという事がわかってしまい、その恋人の記憶を全て消されてしまう。というような場面があったが、私もいっそのこと彼と出会った時からの記憶が全て消えてしまえばラクなのに…と、思った。
その後、ホテルの同僚から、彼はあのホテルを辞めてしまったと聞いた。
ああ、
彼は今元気でいるだろうか、どこでどうしているのだろうか…
努力家で向上心の強い彼のことだから、きっとどこかで元気で頑張っているはずだ。
彼もたまには私の事を思い出す事があるのだろうか?
いつかどこかでもし再会する事があったら、彼に恥じないように胸を張って笑顔でいられるような自分でいようと思う。
そして、今は、"やっぱり記憶は消さないで。"と思うのでありました。