※2008年の九州の旅です。
今回は、文章がちょっと長めです。

🍀 🍀 🍀 🍀 🍀 🍀 🍀 

本日の宿、ユースホステルにチェックイン。

ユースホステルは男女別の相部屋なのだが、この日、女性はどうやら私一人だけのようだった。

早速、荷物を置いて町の中を散策。

近くに『味噌天神』という小さな神社があった。
↑画像は、『熊本市観光ガイド』のサイトよりお借りしました。
本名は、本村神社といい国分寺で大量に腐ってしまった味噌を美味しい味に変えたという言い伝えから「味噌天神」と呼ばれるようになったとの事です。

覗いてみると、口の中に味噌の風味が広がった(ような気がした←そんなワケない)。
思い込みは怖い…(笑)

もっと歩き回りたかったが、暑さと疲れでクタクタになったので、早めに宿に戻り、お風呂に入る事にした。

サッパリして2階の洗濯室で洗濯をしていると、
ガラガラ…
表の戸が開き、若い男性のグループが入って来たのが吹き抜けの空間から見えた。

今日は大学生のグループが宿泊してるのか…サークルの合宿とかかな…

何て思いながら、洗濯を終えて部屋に戻った。

部屋の中で洗濯物を干していると、

コンコン✊🏻

ドアをノックする音。

何だろう…?

恐る恐る開けてみると、若い男性が立っていた。
そして、突然、

「あの…英語できますか?」

一瞬、何が何だか分からなくなったが、

「あ、いえ、初歩の日常会話ぐらいしかできないです…」

と、答えた。

すると、後ろにいたもう一人の若い男性が、

「突然すみません。
実は、一緒にお酒を飲もうと思って隣の部屋の人を誘ってみたら、海外から来ていてあまり日本語がわからない人だったんです。だから誰か英語話せる人がいればなと思って…」

当時私は本当に中学生レベルの語学力しかなかったので、

「お役に立てそうになくてごめんなさい。」

と言うと、

「でも、せっかくなので是非一緒に来てください。お酒も沢山買って来たので。」

と、言ってくださったので、お言葉に甘える事にした。

洗濯物を全て干し終わり、少し身なりを整え直して1階の談話室に降りていくと、

「おっ!助っ人が来た!」

と、歓迎してくださった。

このユースホステルのご主人もおられ、

「この方はどこの国の方かな?チャイニーズ?」

と、とぼけているのか真面目なのか分からない顔で言われたのが面白かった。

勧めてくださった席に座り、テーブルを見ると、馬刺し、辛子レンコン等の熊本名物と、ビールがスタンバイされていた。

「わぁ!すごい‼︎」

思わず歓声をあげてしまった。

程なくして、例の海外の方も談話室に降りてこられたので、いよいよ宴の開始。

ビールで乾杯とともに、
"英語トーク大会"に突入した。

この方は、オランダから来られた若い男性で、英語がとても堪能だった。
更に、旅先で出会ったという中国人の彼女がいるのだそうだ。

ヒューヒュー!
羨ましい〜!

一同大興奮。

そして日本勢は、男性3人。
最初、この3人は大学の友達同士かと思っていたが、各々別の場所から来られていて、この宿で初めて知り合ったのだそうだ。

関西から自転車で来た人、関東からバイクで来た人、九州から仕事で来ていた人。

そう、さっき洗濯室から見えたあのグループが彼らだったのだ。

当時は、翻訳アプリもなかったので、英語トークは、かなり苦戦したが、日本勢4人で助け合って繋がっていったのが嬉しかった。

頭の中の引き出しの奥底から、眠っていた単語を総動員する感じ。

「あ〜、"丘"って英語で何ていうんだろ…?」
「…"ヒル"じゃなかったっけ…」
「あ、そうか!サンキュ!」

みたいな雰囲気(笑)

みんなが分からない言葉は、身振り手振りで、まるでゼスチャーゲームのよう。

みんなの距離が一気に縮まっていき、お酒がすすんだこともあって、もう信じられない位楽しかった。

きっと今夜は、一生心に残る思い出となるだろう。

誘ってくれた3人に大感謝だ。

しかも、飲食代を出そうとしたが、彼らは「こちらから誘って来てもらったので」と、決して受け取らなかった。

部屋に戻った私は、この日、不思議と安心して良く眠れたのだった。

翌朝。
7時15分頃にチェックアウトした。

ふと表を見ると、昨日停めてあった関東ナンバーのバイクが無い。

あ〜、あのお兄さん、もう出発しちゃったんだ…最後に会いたかったな…

残念な気持ちになりながら駅に向かって歩き出した。

途中、信号待ちをしていると、

プップッ!

と、クラクションが。

あっ‼︎  😲

何と、バイクに乗った昨日の関東のお兄さんだった。

朝イチで周辺をバイクで散策して来て、今から宿に戻るところだという。

「良かった。最後に会えて。」

「昨日は本当にありがとうございました。」

「こちらこそ、楽しかったです。お気をつけて!」

お互い手を振って別れた。

何だ!このドラマのような展開はっ!

信号が青になって歩き出した私は、駅まで来たものの

本当にこれでいいのか?

と、何か胸につっかえた感じがした。

いや、このままじゃイカン!

慌てて今来た道を引き返した。
電車が来るまではまだあと20分少々ある。

近くのコンビニで冷たいお茶を3本買い、すぐ横のブロック塀の上で、電車の乗車券が入っていた紙の封筒をちぎり、その裏にメッセージとメールアドレスを書いた。

まだ間に合う…

走って宿に戻った。
スリッパもはかず階段を駆け上がり、彼らの部屋の扉をノックした。

「はい。」

先程のバイクのお兄さんが扉を開け、私を見て少し驚いていた。

「あの。これ、皆さんでどうぞ。どうしても昨日のお礼がしたくて。」

お茶と即席で書いた手紙を渡した。

「わざわざ買いに行ってくれたんですか?ありがとうございます!
「…あっ!ちょっと待ってください。」

カバンをゴソゴソして、名刺を1枚取り出し、私に手渡してくれた。

「関東に来る時は是非連絡ください。」

わぁ、何か繋がった!

嬉しかった。

そして最後にみんなの顔が見られて良かった。
これで悔いなく前に進める。
勇気を出してよかった。

駅に戻ると、汗ビッショリになっていたが、気分は爽やかで晴れ晴れとしていた。

このお兄さんとはそれ以来、メールのやり取りが続き、更に、私が東京に行った時に再開もした。

そしてこの2年後、奇しくも二人ほぼ同時にインドを旅する事になった(何の打ち合わせも相談もしていないのに)のだ。

私が出発するよりも先にインドから帰って来た彼は、私にインドについて色々とアドバイスをしてくれた。
※以前のブログに書いたものが、その時に教えてもらった内容の一部です。



🔴更に、この彼から後日聞いた話🔴

あの日、あのユースホステルに宿泊していた日本人男子3人は全て、最初は別の宿を予約しようとしていたとの事。
しかし、連絡が取れなかったり、満室だったりで、やむなくあのユースに泊まる事になったのだそうだ。

それを聞いた私は鳥肌が立った。

何故なら私も、最初は他のユースに泊まろうと、何度も予約の電話をしたが全く繋がらなかったので、やむなくあのユースに泊まる事にしたからだ。

私達はあの日、あのユースホステルに呼び寄せられ、出会うべくして出会ったのかな…
不思議な縁というか、運命の悪戯のようなものを感じたのだった。


<そして九州の旅はまだ続きます>