レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ&レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う | CAHIER DE CHOCOLAT

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ&レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う


『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(Leningrad Cowboys Go America)』と『レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う(Leningrad Cowboys Meet Moses)』。どちらも以前にも観たことはあって、おもしろかったという記憶もあったものの、内容をはっきりと覚えていなかった。特に、“モーゼ”のほうは初めて観るくらいの感覚だった。己の記憶力の悪さに呆れる。まあ何度も新鮮な気持ちで楽しめるし、これはこれでいいかもしれない(言いわけ)。久しぶりに観た2本は、こんなに最高だったっけ!!っていうくらいおかしかった。すべてがシュールすぎる設定のストーリーが当たり前のように進んでいく(もちろんデッドパンで)。彼らの話す抑揚のない英語がさらにおかしさを醸し出す(わざとおおげさなくらいにそうしているのかなという気もしないでもない)。そこに、こてこてのアメリカンアクセントが人工調味料のような味を追加する。どちらの作品も基本ロードムービーなのだけれども、もはや最高なスケッチの連続のようにすら感じられる(『空飛ぶモンティ・パイソン』の全編ロードムービーのエピソード“The Cycling Tour(サイクル野郎危機一髪)”を思い出してしまった)。“アメリカ”の最初のレニングラード・カウボーイズ登場シーンはインパクトありすぎて、どうしても笑ってしまう。日本のツッパリのようなヴィジュアルと牧歌的だったり、民族調だったり……な音楽のミスマッチ。それにしても、ニーズに合わせてなんでも演奏してしまう彼ら、実はかなりの技術あるすごいバンドなのでは?と観ながら思っていた(実際はレニングラード・カウボーイズは実在するバンドで、音楽はどれもすごく良い! でも、映画内ではへたくそ扱いされている)。1作目でも2作目でも、バンドのみんなは覇気があるんだかないんだか、独裁者リーダーのウラジミール(2作目ではモーゼ)に犬のように従順。“アメリカ”でのメンバーの黒スーツもなかなか良いけど、“モーゼ”で加わるソ連組の軍服風の衣装がまたかっこいい。しかしなんといっても“モーゼ”で一番素敵なのはCIAのジョンソン。まったく予想がつかないとっぴな行動をするかと思ったら、歌うとふり切れまくっていてめちゃくちゃかっこいい。あと、とうとつにはさまれる聖書vs共産党宣言の論議(かな?)もわけわからなくて非常に良い。パイソンズだけでなく、ゴダール的な匂いもちょっと漂っていたり。パッケージによると、“モーゼ”のほうは聖書の世界をパロディ化したものになっているらしい(私はその辺りのところはくわしくない)。こうして書いていると、ただノンセンスでふざけてるだけの映画のように聞こえるかもしれないが、連続した2本の作品としての“モーゼ”のエンディングは感動的でさえある。それにしても、アキ・カウリスマキ監督のコメディの才能はすごいと思う。私なんぞが何を偉そうにという感じではあるけども、ほんとうにそう思う。こういうつき抜けた映画、また作ってくれないなあ。むりかなあ。