モンティ・パイソンの衣装デザイナー ヘイゼル・ペシグ インタビュー | CAHIER DE CHOCOLAT

モンティ・パイソンの衣装デザイナー ヘイゼル・ペシグ インタビュー

[ORIGINAL]
Costuming Python: Hazel Pethig Remembers
1 June 2019
https://wearecult.rocks/costuming-python-hazel-pethig-remembers



モンティ・パイソンの衣装デザイナー ヘイゼル・ペシグ インタビュー:Costuming Python: Hazel Pethig Remembers



*モンティ・パイソンの衣装デザイナー、ヘイゼル・ペシグの2013年のインタビューより抜粋

私がパイソンを担当するように頼まれた理由は…… BBCにいた人たちも、間違いなく良い(衣装)デザイナーの人たちも、誰もあのユーモアがわからなくて、対応のしようがなかったためで、ほかにやる人がいなかったからです。私には合っていたと思うので、頼まれることになってとても良かったです。その当時、私はケン・ドッドの仕事をしていました。

ケン・ドッドは私のテイストとは違っていたんですけど。衣装を運ぶのに使っていたバスケット……ノッティアッシュのあそこで何が必要だったかは思い出せないのですが、とにかくたくさんのものが詰め込まれていました。それから、それを着つけるんです。スケッチ自体のことは覚えていなくて。でもその仕事から戻ったとき、番組にデザイナーを割り当てる人たちに「どうだった?」と聞かれて、私は「とても楽しかった!」と答えました。彼らは信じられないといったふうでした。私たちがやっているような仕事はたいへんだったからです。それで、彼らはあの予定されていたみょうな番組を私にやらせてくれたんだと思います。(番組は)その時点では「Owl Stretching Time」と呼ばれていました。

それまでにBBCがやったことがあるどの番組とも違っていました。まさにそこから始まるところでした。私たちはみんな同年代で、ほんとうに楽しく仕事をしました。ですから、ケン・ドッドにはほんとうに感謝しています! その後またケン・ドッドと仕事をする機会もありました。彼はとても気持ちよく一緒に仕事をできる人でしたよ!


Comedian Sir Ken Dodd dies aged 90 | ITV News

私はパイソンズのコメディに波長が合っていたのだと思います。私から何か提案することもあって、「いいね」となったら、衣装について話し合いをしていました。提案は私なりのユーモアのようなものでした。

コメディをわかるというのは私にはわくわくすることでした。(放送前で)まだ番組と呼べる状態ではありませんでしたし、私だけが理解できたということでもありませんが。私はボヘミアンの世界で育ち、ものごとを常にさかさまに見ていたので、クラッシックなコメディ番組は私にはあまりピンときていなかったんです。でも、あの番組は違っていました。

それと、私は人物の内面を表わす特徴が大好きなんです。あまり衣装デザイナーらしくないかもしれません。ショウガール(の衣装)をやることとも違っています……ショウガール(の衣装の仕事)は以前やりましたが。私がほんとうに興味を持っていたのは人間とその特徴と衣服における心理学でした。ですから、パイソンズとの仕事は理想的だったのです。

私たちは間違いなくひとつのチームでした。わかっている人たちの……そう、ハッピーなチームです。対立はまったくありませんでした。

イアン・マクノートン(*監督/プロデューサー)は素晴らしかったです。最初は誰か別の人だったと思います。ジョン・ハワード・デイヴィスです。彼はおかしな人で、(番組には)合っていましたし、彼との仕事はやりやすかったです。でもイアンのような人はいません。彼は異端です。あんな人は彼しかいません。ジョン・ハワード・デイヴィスのほうがしっかりしていましたし、素晴らしいユーモアのセンスも間違いなくありました。それはパイソン、あるいは、当時の呼び名だと「Owl Stretching Time」のような番組をやるためには欠かせないものです。ポジティヴさ、ポジティヴな空気が必要なのです。イアンはチームの一部でした。彼はパイソンズが求めているものを理解しようとしていましたし、それが難なくできていました。

まずは脚本を読んで、そのユーモアとコメディがうまく理解できたら、読み合わせに行って、さらに大きな概念をとらえます。それから、自分のアイデアを押しつけるのではなく、それぞれのキャラクターをどんな衣装にできるか提案をします。彼らはこうしたいというものを提示します。

脚本の執筆については、ジョンとグレアムはお互いの家でやっていて、マイクとテリーは別々に書いていました。でも読み合わせのときは全員でやります。すべての素材を通して読むんです。読み合わせに入るときが、全員一緒にやる機会です。前もってある程度まとめてはあるようでしたが、そこで決定をしていきます。それはほんとうに……彼らは素晴らしかったです。制作ミーティングでは、彼らは建設的な議論をするんです。スケッチを通して読んで、それらすべてを洗練させていって、新しいものにしていきます。全員が何か新しく提案するものを持っているようでした。私は、ほんとうにすごいチームだと思いました。かなり特別な6人で、みんなかなり強い個性です。時には議論になることもありましたが、生産的でした。それで険悪にはなったりはしません。彼らはいつも一緒にいましたから!  仲たがいしたこともあるのかもしれませんが、私が言えることは何もありません。お互い、書いたものを却下されないようにするために、みんなとても興奮していて、おもしろい読み合わせでした。

それに、彼らはみんな良い脚本家で、色々なことをよくわかっています。ひどい感情表現をすることはありませんでした。

実は、最初のほうのいくつかの衣装は私が担当したものではないんです。It's Man(イッツ・マン)もです。一番最初は私がいなかったので、誰かほかの人が代わりにやってくれました。私は休暇中だったんです。戻ってきた日にすぐに飛び込まなければなりませんでした。最初の4回分の脚本をまだ読んでいなかったので、そうとうがんばって追いつかなければなりません。それで、It's Manに関しては、私はもっとぼろぼろにしたいと思ったので、(裂けた)生地が四角くなっているのではなく、もっと着古した感じにしました。でも、最初はそこまでやる時間がなかったんだろうと思います。あの状態にするにもかなり時間がかかっているはずです。私はとにかくキャラクターを作るのが好きで、何もないところからものを作り出すのが好きなんです。だから、『ジャバーウォッキー』は楽しかったですよ。


*シリーズ1エピソード1 It's Man


*シリーズ1エピソード2 It's Man


*シリーズ1エピソード3 It's Man

時にはキャラクターがどんな見た目なのかをかんたんに説明されることもありましたが、ほとんどは(脚本の)キャラクターの描写に書かれていました。

マイケルについては、「little man(小さい男)」(アーサー・ピューティ)をやるときには、あのキャラクターのためのスーツにしました。人生経験において「小さい」ということで、あれは彼にとって正しいサイズでなければならなかったんです。ぴったりしてて、ほんの少し短すぎる丈で、ぎこちなくて、サイズが合っていない、みたいな。かなり彼の内面の特徴をベースにしたものです。(衣装とその特徴を)相互に組み合わせる作業、双方向のプロセスのような感じです。みんなでアイデアを言うこともありました。でもだいじなのは、衣装デザイナーとしての意見は脚本を書いた人に言わなければならないということでした。誰を想定して書いたものだとしても、です。そして、そうやってより良いものにしていくんです。でも、衣装では笑いを取りすぎないようにします……衣装のことは常に脚本に書かれていたわけではありませんでしたが、マイケルの役の役作りの多くで、衣装は一役買っていたんですよ。

2013年、マイケル・ペイリンは“We Are Cult”のJames Gentにこう語っている。

「ヘイゼルは素晴らしかったです……何かを決めて僕らに押しつけることはありませんでしたし、衣装はこうあるべきというような、“衣装デザイン”の世界の人という感じではなかった。彼女は自分のペースをしっかりと持っている人でした。素敵な人です。感じが良くて、ほんの少しドリーミーで、ニューエイジっぽい、そんなところがある。そして、人物の特徴や性質を探求するのが好きでした。

ヘイゼルと一緒にキャラクターを作り上げていくという方法は素敵だなと思っていました。彼女はとにかく色んな案を探求してみるのが大好きだったからです。独断的だったことは一度もありませんでした。専門用語や衣装業界用語を使っているところはほとんど見たことがありません。とにかくだいじなのはその人物の内面の特徴で、どうやったらそのキャラクターを何かオリジナルな、ほかとは違うものにできるかということでした。細かいディテイルや違いのようなことで意見が合ったとき、彼女はとても嬉しそうでした。違ったタイプのタイとか、ちょっと短すぎるジャケットとか、キャラクターそれぞれの違いを出す、ほんの小さな部分です」


*シリーズ1エピソード2 “Marriage Guidance Counsellor(結婚カウンセラー)”

ペッパーポット(という呼び名)は、年配の女性の体型からきていて、イマジネーションに欠けている人もいるということを表わしています。例えば、『レディ・キラーズ』(*犯罪者と老婦人の対決を描くコメディ映画)のような作品では、衣装はすごく偏っているけれども、キャラクターがうまく強調されていました。コメディの要素を発展させて、見ればすぐにわかるようにして、観る人を引き込みます。話がちょっとそれますが、『Mrs Brown's boys』(*ブレンダン・オキャロルが女装して下町のおばちゃんを演じるシットコム)のエプロンのことを考えてみて下さい。品のない感じにしてある番組です。あのエプロンでその笑いがわかります。気づかない人もいるかもしれませんが、俳優やコメディアンなら、それがわかります。衣装が彼らの演技を手伝うのです。


*シリーズ1エピソード2 “French Lecture On Sheep-Aircraft(羊のコンコルド〜ペッパー・ポットの“おフランス”談義)” (このエピソードでは、ヘイゼルのクレジットは「コスチュームデザイナー」ではなく、「コスチュームスーパーバイザー」となっている)

キャラクターに特徴がないこともあります。脚本に衣装について書かれていることが特にないとか、くり返し登場する予定でないキャラクターとかいった場合です。(“The Dead Parrot (死んだオウム)”スケッチのプラリーンの)ジョンをいったいどうしたらいいのか、困ったことを覚えています。あのレインコートは、ボタンを一番上まできっちり留めると下に着ているシャツが透けて見えます。あのコートが透けているということがたいせつだったんです。

どういうことだったか、どう説明したらいいでしょう……衣装は介入してはいけないんです。衣装はキャラクターを捕捉するものだと私は思っています。でも、ジョンは長い時間衣装合わせをするのがあまり好きではので、急いで着せないといけませんでした。ほとんどだますような感じで着せて、それで、なんとかうまくいっていました。プラリーンはとても実用性を重視しているキャラクターです。「レインコートを着よう。今日は雨が降るかもしれないから」といったことを考えそうで、コート代わりにレインコートを着ることもありそうです。実際にはへんなことですけど。あのレインコートはプラリーンというキャラクターをとてもよく表現しています。雨が降っていないときにレインコートを着るというのはみょうなことです。どうしておかしく見えるのか、理由をうまく説明できないこともあるのですが。

あのスケッチをステージでやることになったときは、レインコートが見つかるかどうか心配しました。以前は入手できていた、あのロング丈のレインコート、あれがとても合っていたので!




*シリーズ1エピソード8 “The Dead Parrot (死んだオウム)”

ガンビーは私の住んでいたサウスエンド=オン=シーがもとになっています。私が育った場所です。人々がゆるい服装をすることはあまりなかった時代で、年配の人たちは襟元をきっちりとめてネクタイをしめていて、せいぜい腕まくりをする程度でした。ガンビーはそれを大げさにしたものです。日よけのための端を結んだハンカチをいつもかぶっています。それから、そのガンビーを生垣の真ん中にぽつんと置いたりもしていました……

そういう男の人たちがとにかく頭に浮かんだんです。ビーチにいてもたくさんおしゃべりとするようなタイプではなくて、“The Sun”みたいなものをたぶん読んでいる。“Reveille”も読んでるかも(*“The Sun”と“Reveille”はイギリスのタブロイド紙)。そんな細かいことまでは考えていませんでしたけどね! とにかく、プラリーンのときと同じように、しゃべっていることにどんなものが合うかを考えました。


*シリーズ2エピソード4 “Architect Sketch(建築コント)”

ばかげていますよ。ビーチから遠く離れた場所では、ほかの人はみんなきっちり服を着ているでしょうから。デッキチェアがなかったら、ああいうキャラクターになっていなかったかもしれません。デッキチェアがヒントになったんです。脚本にはデッキチェアはなかったと思いますが、ジョンがリハーサルするのを見ていたときか何かに、デッキチェアの話が出て、私はそれで思いついたはずです。その後はもちろん、ガンビーはいたるところに現われましたが。でもあのデッキチェア、確かにあの時が最初でした。あれがきっかけでした。

ゴム長靴もだいじだったかもしれません。とてもじめじめした日でもあったんです! 使えるものがあったはずだと思って、トラックに取りに戻りました。トラックにはいつか使うかもしれないと思うものが入れてあって、ちょうど必要なようなものがありそうだったので。フェアアイルセーターが目に入りました。フェアアイルセーターは流行しましたが、ファッションとは関係ありません。それから、トラックの中を見回して、ゴムブーツがぴったりだと思いました。ジョンはデッキチェアに座ることになっていたからです。雨が降っている日で、いい感じの見た目になりました。あれでしっくりこなかったら、おそらくサンダルとソックスを彼に履かせていたと思います。でも、あれほど良い衣装にはならなかったでしょうね。


*シリーズ1エピソード5 “A Duck, a Cat and a Lizard (Discussion ), Vox Pops On Smuggling(犯罪とモラルについて考える)”

すべてが人物の特徴とそれをどう表現するかということなんです。ピザーのようなキャラクターもです。ピザーは楽しかったです。私は、彼は耳に脱脂綿を入れているかもと言ったと思います。そういうのは最近は見かけないかもしれません。でも、耳鼻咽喉科や薬局に並んだ見事な医薬品などはすべてがへんてこなもののように感じられていました。若い頃、ティーンの時にはよく友だちとパブに行っていたのですが、そこでお客さんひとりひとりの服装の特徴を見ていました。私にとってはファッションよりも興味があるものでした。


*シリーズ3エピソード8 “The Cycling Tour(サイクル野郎危機一髪)”

テリー・ジョーンズは甲高い声の女性を演じることが好きでした。彼はとても幅広いさまざまな女性になることを楽しんでいたんです。私は色々なタイプのボディを作ることになりました。BBCのストックにはある程度のパッドがあったので、それにさらに加えたり、組み合わせたりしました。

紳士用のスーツは買い上げていました。借りるか買うかしなければならなかったのですが、紳士用スーツは買っていました。グレアムのカーネル(大佐)の軍服は借りなければなりませんでした。きれいな衣装を入手するのはお金がかかったからです。何度も同じ衣装を借りにいかなければならないのはたいへんだと感じることもありました。


*シリーズ1エピソード8 “THE FLASHER HELL'S GRANNIES(恐怖の不良集団グレバッパ族)”

テリー(・ジョーンズ)がアーサー・キットをやったときは、その日の朝に衣装を作らなければなりませんでした! いつもキャラクターに名前がついているとは限らないので、テリーにアーサー・キットの衣装が必要だとわからなかったんです。私がそれを作っている間、グレアム・チャップマンは一晩中起きていてくれたんですよ! スパンコールを縫いつけながら、グレアムと一晩ずっと起きていたのですが、彼は「もう寝なさい!」と何度も何度も言っていました。それで結局、同じベッドで寝込んでしまいました。

目が覚めてから、撮影が行なわれている間に数時間でそれをまとめなければいけませんでした。運良く、私は布を持ち歩いていました。パッドやら何やらをいつも持っていたんです。でも、うまくいったからよかった。彼(テリー)はかつらもかぶらなければならなかったんですけど! だいじなのは、完璧なアーサー・キットのドレスにしてはいけないということです。予算のことだけではなく、ユーモアのためです。幸運にも昼食前までには、靴などを含めて、すべてなんとかうまくできました。


*シリーズ3エピソード8 “The Cycling Tour(サイクル野郎危機一髪)”

当時はあまりたくさんの貸衣装屋はありませんでした。BermansやNathansなどに電話で頼まなければならないときもありました。でも私はこっそり欲しいものを入手したかったので、マーケットを見て回っていました。昔ながらのマーケットです。そこで、テリー・ジョーンズのエプロンを手に入れました。

BBCに膨大な品揃えの衣装部門があったのは助かりました。そこにはバラエティ用に借りられるものがありました。大量にです。制服はありませんでしたが。そこにあるストックを使えば、ほとんどお金がかかりませんでした。BBCの衣装部門がなければやっていけなかったと思います。今でもそうだと思います。聖職者の衣装で良かったのはBermansでした。

スタッフも雇わなければなりませんでしたが、それにはちょっと予算がかかりました。でも、保管にはまったくお金がかかりませんでした。当時、それ用の大きなバスは「Pink Elephant」と呼ばれていました。そうです、巨大なトラックでピンクだったからです!

ビグルスの友人の飛行士のピンクの衣装をフリースで作ったことを覚えています。二晩かけて家で作りました。衣装屋さんに持っていく余裕がなかったので。時間の余裕という意味ではなく。


*シリーズ3エピソード7 “Biggles Dictates a Letter(ミスター・ピグルスの大冒険)”

衣装合わせに関しては、彼らは協力的なこともありました。でもいつもはなんとか衣装合わせをしてもらうようにしなければなりませんでした。テリー・ジョーンズとマイケルは衣装を着るのを楽しむほうだったので、彼らはちょっとラクでしたし、ちょっと楽しかったです。エリックはそんなに興味があるふうでもありませんでしたが、なんとかなりました。けれども、ジョンは衣装合わせが好きではなかったので、どうにかして説得しなければいけませんでした。いつもしないといけなかったんですよ! スペイン人をやったときは、コンキスタドールのかっこうをしなければなりませんでした。公園とか木の陰とかあらゆる場所で着替えをしていましたが、彼は息を吸って、吸って、胸を大きくふくらませて、言うんです。「見てよ、ヘイゼル。合わないよ、合わない」って。それを着たくないからです。でも着なければいけません。だから、彼の胸にパンチして空気を外に出して、胸の辺りまでダブレット(*15~17世紀ヨーロッパの体にぴったりした丈の短い男性用上着)を引っぱって、言いました。「ほら、合ってるよ、ジョン。合ってる。着ないと」って。それから、着るのが終わっても、今度はヒゲをつけたくないんです。ジョンはこういうものを全部身につける必要はないと思っていたので。でも、ほかのみんなが身につけているのですから、もちろん彼も身につけました。黒のTシャツと黒のパンツでやるわけにはいきません。彼に衣装合わせにきてもらうのもたいへんでした。私は、ジャケットが私のひざに合わなかったら、ジョンには合うとわかるようになっていました。『ライフ・オブ・ブライアン』の時には、彼はローマ人の衣装を部屋の反対側に投げ飛ばしたんですよ。私は笑ってしまいました……


*シリーズ3エピソード10 “Elizabethan Pornography Smugglers(フィリップ・シドニー卿の華麗な日々)”


*『ライフ・オブ・ブライアン』

衣装を着ることに関しては、テリー・ギリアムはすごく良かったです。彼はとてもヴィジュアル的なタイプですから。

でも、最終の衣装合わせのためにBBCのストックルームに全員がくると、みんなでぐるぐる走り回ってしまうんです。彼らをつかまえて衣装を着せるために、私もぐるぐる走り回らなければならなくなってしまう。そうしながらみんな笑っているんですけど。その時は、誰も今入ってきませんようにと願っていましたよ! グループになるといつもエネルギーが増大するんです。『Python Night – 30 Years of Monty Python』の時、彼らにまた大きな部屋に集まってもらわなければならかったのですが、まったく同じようなことをまたやっていました。私たちみんな、それが大好きなんですけどね!

“Scott of the Sahara(サハラのスコット)”はとてもおかしくて、すごく楽しかったです。ライオンが出てくるのですが、それが3つぐらいの色々な場面に登場します。それで、ライオンの衣装を作らなければなりませんでした。それから、キャロル(・クリーヴランド)です。彼女はかなり頭が良いんです。キャロルはいつもはグラマーな女の子として登場するのですが、キャラクターをやってくれるように頼まれることもありました。一度、小柄なおばあさんをやってもらったとき、最初はとても難しそうにしていました。小さなグレーのかつらとぼうしをかぶって、銀ぶちのメガネをかけて、おかしな古い靴を履かなければならなくて。でもその時、彼女はだんだんそのキャラクターになっていって、それから番組にもっとたくさんの役で登場するようになりました。

キャロル・クリーヴランドは番組の一部になっていました。「ミソジニック」な番組ではなかったからです。ジョンはあまり彼女の近くにいようとはしませんでしたが、それはキャロルが彼をよくからかっていたからです。私は、彼女の胸を寄せて上げて、バニーガールのように見せなければならないこともとてもたくさんありました。いたってふつうに見える彼女が、そうするとがらりと変貌するのです。

彼女がホワイトフォックスのファーを着なければならないときがありました。私はそれをあまり使いたくはなかったのですが、その日は見事なフォックスファーのコートが必要でした。砂浜にサボテンがあって、彼女のコートがサボテンに引っかかるようにしなければならなかったんです。最初に彼女が走り抜けていくときは完全にトップレスではありませんでしたが、クルーはその様子を最後まで全部見ていました。だから、彼女が走ってくるとすぐに、私はカバーするためのガウンを持って駆け寄りました。でも早すぎてショットを撮り終える前だったんです。最初からもう一度やらないといけなくなったから、クルーたちはわくわくしていましたけどね。






*シリーズ2エピソード10 “Scott of the Sahara(サハラのスコット)”

そういう感じで、彼女はセクシーなボディのためにそこにいたのですが、シリーズが進んでいくにつれてコミカルな役を演じるのがとてもうまくなっていきました。“Hammer Horror(ハマー・フィルム・プロダクションズのクラッシック・ホラー映画)) ”に出ていた女の子たちと比べると、彼女は女優でした。

ストリッパーに出てもらったことも一度ありました。バーンズリーで、とりあえずで。そのストリッパーの衣装にはジッパーがついていたのですが、彼女はマラボーフェザーの巻き物も身につけていて、そのフェザーがジッパーにはさまってしまったんです。フェザーのボアがジッパーにはさまって取れなくて、ほんとうにあせりました。彼女がセットに行かなければならない時間のぎりぎりのところでなんとか取れましたが、ちょっとぞっとしました。流れを止めてしまいますからね。


*シーズン1エピソード “Eighteenth-century Social Legislation(歴史の世界 その2・セクシーバージョン ”

私にとっては、個人的に一番おもしろかったスケッチは“Upper Class Twits of the Year(第127回上流階級アホレース)”です。私は観客席の上の方にいて、監督のうしろで実際のテイクを見ながら、番組(撮影)をやりながら、彼らを見ていました。“Upper Class Twits”はもちろんフィルム撮影です。私はたくさん笑って、スツールから転げ落ちました。とてもおかしかった。「私、ラッキーじゃない?」と思いましたよ。リハーサルを見て、撮影するところも見て。今観てもまだおかしくて、大笑いしてしまいます!


*シリーズ1エピソード12 “Upper Class Twits of the Year(第127回上流階級アホレース)”




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* の部分、動画、作品画像は加えています。




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『空飛ぶモンティ・パイソン』シリーズ1~3(シリーズ4はアンドリュー・ローズが担当)、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』、『ライフ・オブ・ブライアン』など、モンティ・パイソンのメンバーの衣装を数多く手がけている衣装デザイナー、ヘイゼル・ペシグの2013年のインタビュー。結構長いのですが、これでも抜粋だそうです(全部読みたい〜)。私は彼女のスタイリングがほんとうに好きで、どんなふうに決めているんだろうと思っていたので、それを少しでも知ることができて嬉しいです。単純にテイストが好みというだけでなく、どうして彼女の手がけるものが好きだと思うのか、その理由もよくわかりました。前のインタビューでも出ていたジョンの衣装嫌いの話、こちらでも出ています。新たなエピソードも加わって、ますますおかしい。マイケル、テリーJ、テリーGは衣装を楽しんでいたというのは納得。マイケル&テリーJは映像でおもしろさを表現するスケッチを得意とするペアだし、テリーGはそりゃそうですよね。『ライフ・オブ・ブライアン』のコメンタリーでも、テリーGはそこまでやるかっていうくらいこてこてにメイクから衣装までやっていたという話がありました。エリックは衣装にはそこまで興味なさそうだったというのはちょっと意外な気もする。きっとエリックの女装のクオリティが高すぎるからでしょう。でも、彼はことばと音楽で表現している人だということを考えると、特に不思議ではないのかもしれない。ジョンもセリフとその間などで笑いを作り出すタイプなので、やはりヴィジュアル派ではないということか。そのジョンと一緒に脚本を書いていたグレアムは衣装に対してどんなだったかという話は出ていないのが残念!(掲載されていないだけかもしれないけど) でも一緒に徹夜してくれたというエピソードは素晴らしくて感動するレベル。怒りながらもつき合ってくれたというのが、その姿をなんか想像できるし、たまりません。グレアム素敵すぎる。前のインタビューでもそうでしたが、ますますパイソンズを好きになってしまう、そんなインタビューでもありました。ほんとうに、衣装のことや当時のことなど、もっとたくさん話を聞いてみたいです。




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