The Wind in the Willows / Mr. Toad's Wild Ride | CAHIER DE CHOCOLAT

The Wind in the Willows / Mr. Toad's Wild Ride


児童文学『The Wind in the Willows(たのしい川べ)』をもとにした、テリーJ脚本&監督の1996年のアドベンチャーコメディ映画。ミュージカル要素もあり。メインの登場キャラクターは、もぐらのMole(スティーヴ・クーガン )、川ねずみのRatty(エリック)、ひきがえるのMr. Toad(テリーJ)、あなぐまのBadger(ニコル・ウィリアムソン)の4人組。着ぐるみではなく、ポイントを押さえてそれぞれの動物を表わしている4人の衣装&ヘアメイクが素晴らしい。まず、Moleは指なし手袋をはめた手がもぐらの手に見える。地中で暮らしているせいか、結構な猫背。Rattyは服から出てるしっぽがとにかくすごい。実際に見たらちょっと気持ち悪いかもしれないと思うくらいに長くてリアルな質感。これを引きずって歩くエリックが可愛い。Badgerはシルバーヘアまじりの長髪がダンディ。この髪の毛のシルバーとブラックの毛束があなぐまの毛皮と同じストライプになっている。一番すごいのがToad。皮膚が緑がかってる。緑のテリーJ。ほっぺたがほんのりピンク色だったりして、なんとなく可愛らしさがある。体型的にもテリーJの良さがぞんぶんに生かされていると思う。かえるなので舌がびょーんと伸びる(下に貼った予告編にあります。ぜひご覧下さい)。個人的には、Toadのキャラが私の好きなテリーJなのがなんせ嬉しい。『ホーリー・グレイル』のハーバート王子とか『空飛ぶモンティ・パイソン』のハムレットみたいな、ちょっとぼんやり、でも、マイペースに何かに目を輝かせるようなタイプ。Toadはほんとに幼くて、困ったちゃん。遺産を受け継いでお金を持ってるし、時々ちょっとずるいし、むかつく。なのに、けろっとしてて(ダジャレか)、どうもにくめない。あと、Toadのティーレディ姿はさすがのテリーJクオリティなおばさんっぷり、顔は緑だけど。4人の敵となるのは、いたち軍団“Weasels”。いたちは小さな体に似合わず凶暴で、英語では「weasel words(逃げ口上)」、日本語でも「いたちごっこ」などの表現があって、あまり良いイメージがない。そんな彼らがユニフォームとして着ているキャメル色(いたち色?)のウールのコートがスタイリッシュで素敵なところがまたはら立たしい。あちこちについた赤字に黒のWのマークはちょっとナチスっぽい。エキストラ的にたくさん登場するのはうさぎ。「breed like rabbits(繁殖、多産の象徴)」でやたらラブラブしてたり、おとなしいからイタチの言いなりになってしまったりする。物語はイギリス階級社会の風刺でもあるそうで、Toadは川の上流に住んでいるから上流階級、RattyとBadgerは中流、地面の下に住んでいるMoleは下級となる。映画内では、Moleはびっくりしたとき、「What on earth?(いったいどうなってるんだ?)」ではなくて、「What under earth?」と言うところがおもしろい(これ、「on earth」が「いったいぜんたい」という驚きを強調する熟語なので、字幕にするのが非常に難しいセリフ)。まったくサイズの違う動物たちがみんな人間サイズで、ふつうの人間もたくさん出てくるけれど、その辺はまったく気にならなかった。Toadの弁護士役でジョン、太陽役でマイケルもゲスト出演しています。物語は色々な意味で深い部分もありつつも、決してお説教くさくはなくて、ひたすら楽しいドタバタ劇。川辺の自然やToadのお屋敷、お城(物語の中では刑務所)など、画的にも美しいし、音楽も良い。日本では劇場公開もソフト化もされていないようなのが残念!