マリッジ・ストーリー（Marriage Story）

基本静かに人々の心の動きと変化を追っていく作品。どうしてこんなふうになってしまったの？と思っても、止めることも変えることもできなかった、そういうことは確実にある。それがていねいに、時に、逆らえない流れに押し流されるような勢いで描かれる。たとえ上手く着地できたように見えたとしても、かつてはお互いを思い合ったという事実があったとしても、負った傷は消えないし、それが生きていくということ。過去に戻ってやり直せたって100%満足できることはないのだから、受け入れて自分の一部にしていくしかない。そして、それはあきらめではなく肯定だと私は思いたい、そう思える人生を生きたい……そんなことを考えたり、思い出したりしていた。思わず「オー、イエス！」と言いたくなるセリフやモノローグもたくさんありました。画面の隅々まですべてがグッドテイスト。それからやっぱりアダム・ドライバーのちょっとしたしぐさのフィジカルな演技の良さ！　その後、連載の“映画衣装の密かな愉しみ”で取り上げることになって、何度も観たり、あれこれ調べたりしましたが、色々とかなり細かく織り込まれているようです。Netflixなので、まだの方は観てから連載の記事も読んで楽しんでいただけると嬉しいです。イースターエッグやめちゃくちゃ細かい部分はコチラにオマケで書いています。サントラも良かったのでレコード購入しようかと思ったのですが、盤質やプレスが結構良くないというレビューが複数入っていて、迷っていたら売り切れてしまっていました、残念。


* “favourite films 2019”に加筆修正。