映画:「クラッシュ」
クラッシュ [Crash]
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監督: ポール・ハギス Paul Haggis
出演: サンドラ・ブロック Sandra Bullock
ドン・チードル Don Cheadle 他
【解説】
クリスマスを間近に控えたロサンジェルス。黒人刑事グラハムとその同僚でヒスパニックの恋人リア。銃砲店で不当な差別に憤慨するペルシャ人の雑貨店経営者ファハド。白人に敵意を抱く黒人青年アンソニーとピーター。地方検事のリックとその妻ジーン。差別主義者の白人警官ライアンと同僚のハンセン。裕福な黒人夫婦キャメロンとクリスティン。やがて彼らの人生は思いがけない形で交錯、大きく狂い始める…。
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ロサンゼルスのある36時間に交錯する登場人物たちの群像劇。
アカデミー賞で、本命「ブロークバック・マウンテン」を破って作品賞受賞。
登場人物がたくさんいて、それぞれがかなり濃い密度で関係してくるので、ご都合主義な感じは否めないけれども、それでもかなり良い脚本。キャラクターの書き分けがすごく良くできているために、ストーリー全体が混線せずにうまくまとまっている。
人種差別を扱った作品なので、少し分かりにくいところもあったけど、テーマの本質は「人間性」じゃないかなと思う。完璧な善人はいないし、完璧な悪人もいない。人は誰しも、やり場のない悲しみ、苦しみ、怒り、嫉妬といった負の感情を抱えながら立場の弱い人を傷つけ、また逆に人に傷つけられて生きている。それでもなお、誰かに触れ合いたい、何かを感じたい、心の乾きを潤したいと求めずにはいられない、弱い存在でしかないということ。そのために馴れ合いではなく、衝突(Crash)せずにいられないということ。
登場人物の印象がストーリーが進むに従ってどんどん変わってしまうのも面白いところ。黒人蔑視の白人警官、彼に反発する新人警官、自動車泥棒の黒人青年、それぞれが起こす行動。「この人物はこういう性格だ」と偏見を持って見ている観客全てを嘲笑うかのようなストーリー自体が、差別の元凶が何かということを教えてくれる。
人間はどうしても経験則から得られる自分だけの基準で物事を判断してしまいがち。それは、溢れる情報を出来るだけ単純化し、系統づけなければ、自分の強さや弱さ、善悪といった判断基準自体が揺らいでしまって自分を保つことが出来ないから。(自分なりの)ステレオタイプの考えを持たないでいることは難しいけれども、反面、自分の知らないことを知ろうとする努力、自分以外の人の考え方を理解しようとする柔軟さ、自分が正しいと信じているものを疑い再検証する勇気も持たなければいけない。
個人的には「透明マント」のエピソードが秀逸。伏線の張り方もなかなか上手い。安直なハッピーエンドにせず、含みを持たせて、ささやかな救いを感じさせるラストも好感度大。