表面、凸凹写真で感じて 視覚障害者向けに開発 | 犬の病気 皮膚病

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表面がでこぼこで、目の不自由な人が触って姿や形をイメージできる特殊な写真の技術開発が、常磐大(水戸市)の中村正之研究室で進んでいる。4年前に完成した天文分野の資料は、すでに全国で1万人が観賞。新たに、人の顔の表情の立体写真化に世界で初めて成功した。広がる表現力は、障害者の光明になるとともに、生涯教育や博物館の関係者から注目を集めている。

「見えない光がさしてくるようです」

「心に希望がともりました」

視力にハンディのある人たちは、立体写真に触れ、これまで知ることができなかった形を体感する。涙する人も少なくないという。

研究室では、触覚型資料の開発を6年前に始めた。生涯学習が専門の中村教授(57)は天文愛好仲間から「全盲の叔父に星の写真を説明しても、表面がつるつるなので触ってもわからず寂しい思いをさせた」と聞いた。そこへ偶然、立体コピーの存在を知り、掌(てのひら)で感じ取る資料を開発するアイデアが生まれた。

写真をカプセルペーパーという特殊な紙に印刷して立体コピー機に通すと、インク部分が膨張してでこぼこになる。画像ソフトで濃淡や拡大率を調整し、立体写真に仕上げる。音声で案内するシステムはメーカーと開発した。

視覚障害者だけでなく全ての人が一緒に観賞できる資料が目標だ。右半分に触れる立体写真、左半分に解説文(点字と墨字を併記)と原画のカラー写真を置く様式を考案した。

「だれもが同じ場所で、同じ時間に、同じ感動を共有してほしい。幸せが一層深まるでしょう」と中村教授は説明する。生涯学習の理念でもある。

最初に手がけたのが、天文資料。惑星や星座など80点を製作し、展覧会を首都圏中心に19回重ね、計1万人以上が訪れた。学生がガイドや運営を全て担った。

第二弾が人の表情だ。視覚障害者にとって相手の表情は手で顔に触らないとわからないが、実際に触るのは難しいので、立体資料が役立つと考えた。天文より万人に通じる顔を対象にすることで、触覚型資料の可能性を広げる狙いもあった。

喜怒哀楽をテーマに、学生24人が自分や家族の顔写真を撮り、100点製作した。昨年の春にほぼ完成していたが、震災を経て一時中断。学生たちは、被災地でのボランティアと並行して資料を修復した。

8月、東京・汐留の博覧会に招かれ1カ月間、展示。来場者の意見から、しわなどの線が多いとかえって理解しにくく、男女の顔の違いもわかりにくいことなどに気づかされた。

3年生の渡辺慶太郎さん(21)は「実際に通じるのか不安でしたが、資料を待っていてくださる方々がおられて、感激した。小さな研究ですが、実用的に発展させていきたい」と語る。

自治体や博物館の期待が高まり、日本中から資料の貸し出しや講演依頼、技術提供の要望が相次ぐ。栃木県では天文館の常設展示になった。防災マップへの応用を考える市や、絵本作家からの相談もある。

学生たちは、さらなる可能性を模索する。祭りや花火、風鈴といった日本の風物も立体写真と音源で伝えたいと考え、撮影を始めた。近い将来、行政窓口や図書館などで「当たり前の資料」となることを願っている。

出典:朝日新聞