最近読んだテツの本をご紹介します。
大穂耕一郎 2002年 ちくま文庫
鉄道ファンにもいろいろな方がいますが、駅前旅館をとまり歩くというユニークな趣味の方が書かれた本です。発行されたのは2002年と今から16年前。
芸備線備後落合駅前「大原旅館」(1996年)
「駅前旅館」、ちょっとそそられる言葉です。
思えば、40年以上前に泊まった、名松線・伊勢八知前の旅館、30年前の標津線・根室標津駅前の旅館は駅前旅館だったような気がします。
私は北海道の住人ですが、道内ではかなりの田舎駅にも、廃線となった元駅の近くにも駅前旅館及び元駅前旅館を見かけます。昭和40年代前半までは北海道の道路はまだ整備が遅れていて、行商の人たちが広い道内の開拓地まで鉄道を利用して訪ねていた名残りであると思います。
当時と客層は異なってはいますが、まだ元気な駅前旅館も道内に見られます。例えばいまは無人駅となっている妹背牛駅前の旅館の客層は主に公共工事を請け負う人たち、礼文駅前の旅館では漁港の港湾工事の方の様です。本書の著者は北海道についてはあまり取り上げていないのので、これらが消える前に研究する価値はありそうです。
函館本線妹背牛駅前「もせうし旅館」(2017年)
旧天北線小頓別駅前「丹波屋」(2016年)
本書はそんな懐かしい、消えゆく運命にある駅前旅館を訪ね歩いた書です。本書が出版されてからだいぶ時がたっています。取り上げられた駅前旅館のどれほどが今残っているのか、気になるところです。
著者は最後に、整備新幹線の延伸の影で3セク鉄道が生まれ、ネットワークとしての鉄道が分断されていることを嘆いています。私も同感です。国鉄分割民営化の際、台湾のように新幹線をと在来線とは別会社として分割して共存共栄の形にすべきだったと思います。