16.再び心の声が。 | FOXGODへの道

FOXGODへの道

定年間近のあるテレビマンは、1枚のFAXをきっかけにある3人の女の子に出会った。その瞬間から彼の人生は一変する。そして全くの異業種に転職。彼が営む大人の秘密基地の名は、「FOXGOD TOKYO」

 

その熱いものは、
強く握った拳にポトリと落ちた。。。

 

不覚だった。10代の女の子の歌に感動して
まさか涙が出るとは1時間前には想像も

つかなかった。

 

1時間前、開演までに会場に到着しようと
人がいない寂しい広場を走りながら、
その日にやらなければならない仕事内容を

考えてなんて俺、バカな事してるんだろうと

思った。
若い頃は、徹夜連チャンでも平気だったけど


年取って徹夜すると、体が回復するまで

1週間かかる。
今回完徹ではないけど、気持ち的にはそれに

近い。
俺何やってるんだろうと、ちょっと後悔しな

がら走った。
観覧車の下にあるという会場が凄く遠く感じ

た。

 

でも来て、本当によかった。

 

人前で涙流したの何時以来だろう。
「HACHI 約束の犬」以来かも

しれない。
それも音楽では生まれて初めての

経験だった。
映画でもそうだけど、周りに気が付かれ

ないように涙ふくの大変なのよ。
眠い目をこするふりしてサッサッとふいた。
あの´無味乾燥´の奴らに「あっ泣いてる」と
思われるの絶対にヤダったからね。

 

気を取り直して。さー次の曲はどんな

ビックリが待ち受けているのだろう?

 

暗転したままで「シーシーシー」という

女の子の声がした。

するとロンドンと東京共にYO!YO!の

大合唱。

やはりこのグループ、
ステージと客の一体感ハンパじゃない。
YO!ってことはまたもラップ系の曲かな?
ステージにライトが当たり、左右の女の子が
現れた。これまでのパターンから、左右の

女の子の曲だろう。

 

バックの演奏が始まり、

左右の女の子が歌いだした。

おーぃ「1の次は2。2の次は3。

3の・・」って
何?この歌!1の次2は当たり前じゃん。
さすがにこの曲、幼稚すぎないか。
それなのにロンドン、東京の盛り上がりは

凄い。
あーっ「YO!」じゃなくて「4」なんだ。
「4」の事の歌の様だけど、意味が全然判ら

ない。
幸せのシ?死ぬのシ?わー、頭の中が大混乱
そして、観客皆の手は先程までの指の形では

なく親指折って4を表しているのか。
そして「ヨン!ヨン!」の大合唱。
女の子「フォーッ」って、英語でも4だ。
このグループ、4と何か関係あるのかな?
さっぱり判んない。

 

おっと、ここでデスメタルだ。

この両手を挙げる振付。確か1曲目と同じだ

と思ったら今度はスローテンポ。

ハワイアン?

ロンドン、東京のおよそ4000人が手を

左右に振りだした。

両方が一望に見える2階席からだと壮観だ。

わっ、「よいしょ」もカワイーぃ!

 

その時、またも心の中から声がした。

 

『呼ばれて、飛び出て、

ジャジャジャジャーン!
よぅ!久しぶり』

 

古っ。久しぶりじゃなく呼んでもいないよ。
もう出てくんな。

 

『ほらみろ、俺の言った通りじゃないか。
さっきの曲は、百歩譲って、確かにお前が

言ったように音楽に理屈は関係ないんだと

いう気がした。
俺も感動したよ。素直に敗北認めようかとも

思った。
でもこの曲、アイドルソングというより、
NHK教育テレビ
の子供向けソングそのもの

だぜ。
55になろうというオヤジが聞くもんじゃ

ねえ。

さっさとココから立ち去りな』

 

確かに。。今、頭の中はパニックだよ。
もし、このステージを観ずに音源だけだった

らとっくに消してると思う。
でも、この盛り上がり方、凄くないか?
日本のコンサートでは、ファンが左右に手を
振るのよく見るけど、海外で見たの
自分としては初めてだよ。

 

『世も末って感じだな』

 

それに、お前さっき口パクだって言ったけど
ほら、ちゃんとこの二人歌っているよ。
ダンスしながら息を切らせて歌っているのが
はっきりと判る。

 

『おぅ、それは俺も判ったけど、それと

これは別だ。

ロンドンでは歌詞の意味全く判らないから
盛り上がってるけど、歌詞の内容知ったら
みんな幻滅するはずだ。』

 

でもね、ほら、二人の元気な姿見てなんか
楽しくならないか?あと表情もめちゃ可愛い
ほらほらあの笑顔

 

『それをアイドルヲタって言うんだよ。あと
この子たちはロリコン要素もあるから、
なおタチが悪い』

 

おいおい、今まで感動した事は全て事実だし、
嘘はない。今回は俺にブが悪い気もするが、
結論はこの後全て観てからにさせてくれない

か?
頼む!

 

『わかったよ。
この後ガッカリしても知らねえぞ』

 

心の声はそう言うとまた去って行った。

わー、まだ頭の中がパニックしてる。
でも、あの鳥肌。感動。涙は嘘ではない。
よし!最後まで見届けるぞ。

 

大歓声と共にその曲は終わった。

自分は、まだこの曲の評価は出来ないが、

この後も君たちが本物だということを

存分に見せつけてくれ!

だって、自分に涙を流させた

唯一のバンドなのだから。

 

 

ここで後日談を。。。
この曲がDeathMetalの
Death-死-シ-4-よん。の

言葉遊びだった事、

このライブが終わった後に知りました。
そして、この曲がベビーメタルのライブで
観客を盛り上げるのに欠かせない
だと

6ヵ月後のSSA新春キツネ祭りで確信します
その時の「4の歌」は、本当に最高でしたね
この後、心の声は一度も出てきてませんが
今度出てきたら、こう言うつもりです。

「彼女たち本物だっただろ」と。

でもね、世の中の人の大半が、今でも

心の声と同じように思ってるんですよ。

そういう人は、いくら説明しても判って

くれない。

 

だから『RESISTANCE』

なんだけどね。

 

(第17話へ)