サイネオスでは現在、サービス残業が蔓延しています。その一例として、Jビジネスユニットの状況をお話いたします。

 

Jビジネスユニットでは、2020年から継続的に、以下のようなトレーニングが行われています。

 

 ・残業は当たり前ではなく、異常なことである

 ・残業は会社の収益を圧迫する

 ・Over Quality(過剰品質)はやめ、効率的に働き、生産性を向上させる

 ・アサインされたFTE(Full-Time Equivalent)内で業務を完了させる

 

FTE(Full-Time Equivalent)とは、社員1名分のフルタイム勤務時間を1とし、勤務時間の何割をその業務に費やすかを表す数字です。

 

例えば、ある社員がAプロジェクトに「0.2FTE」をアサインされた場合、その社員がAプロジェクトの仕事に割ける時間は、全勤務時間の2割になります。

 

しかし、このFTEを決定しているのはディレクターの一存です。

サイネオスでは、大量の業務を、0.2や0.5などの少ないFTEでアサインされている社員が大勢いるのです

 

過去に「FTEが業務量に見合っていない」と訴えた勇気のある社員がいましたが、ディレクターから「Over Quality(過剰品質)である」と結論づけられてしまいました。

 

Jビジネスユニットの「残業をなくし効率的に働け」という効率化の具体的指示は以下のようなものです。

 

 ・優先順位をつける

 ・業務量の把握

 ・付箋機能などを利用しメモを残す

 ・業務の洗い出し

 ・社員間の無駄な会話を止める

 ・ムリ・ムラ・ムダを排除

 

残業に至る最も大きな要因である「業務量」については、何の言及もありません。「残業の原因は全て社員の非効率な働きぶりにある」という前提に見えます。

残業時間を減らす責任を社員に押し付け、会社側は何の努力もしていないと感じます。

個人で行う効率化の一般論で、劇的に業務量が減るわけがありません。

 

社員が「残業しないと仕事が終わらない」「FTEが足りない」と訴えると「論理的根拠」を求められることがあります。

 

他の社員が聞いただけで「FTE内で対応できるはずがない」と感じる無理なアサインなのに、上司に「業務時間内に対応できない根拠」をレポートしなければならないのです。

業務に追われている中、このレポートや議論にも時間を割かれます。

 

しかも、会社はFTEしか見ていないため、アサインされたFTEが少ない場合「暇な社員」と見なされ、追加の業務をアサインされてしまいます。

 

仮にFTEが0.4余っていたら、他のプロジェクトを0.2+0.2ずつ追加することも可能で、まるでパズルのようです。プロジェクトの掛け持ちによる負担の増加は考慮されません。

FTEが仮に1以内であっても、それが妥当な業務量であるという保証がないことも問題だと考えます。

 

社員には「効率化」を求めますが、ディレクターやマネージャーからの指示が効率的ではないことについては、改善する気配もありません。

 

前触れもなくある日突然アサイン、またはアサイン終了される(時に事後連絡)、充分なトレーニングや資料もないまま「とにかくやれ」と命令される、いくつものプロジェクトを掛け持ちさせられるなど、非効率で理解できない指示が多く、社員に大変な精神的・肉体的負担がかかっています。

 

また、過剰品質をやめろと言いながら、業務でミスがあってもよい、とは言われません。

常に最速の速さでミスなく業務を遂行する、そんなことは不可能です。

会社の指示で、説明もなくいきなり不慣れな業務を行わなければならず、親身に教えてくれる人もいない中、分かりづらい英文のマニュアルを読み込む時間は、勤務時間ではないのでしょうか。

 

ブログ「アラ還オヤジの備忘録」『FTEとプロジェクトの“炎上“』 の記事の中に、以下の記述があります。

 

「そもそも”Aプロジェクトに必要なFTEは4.5”というのは、どれほどの”信ぴょう性”があるのだろう?〈中略〉少なくとも私がこれまで経験してきた業界では、かなり怪しいものだった」

 

「時には、経営上のプレッシャーから、必要FTE数を調整(要は削減)する事態が発生することは、想像に難くない」

 

「口では『社員第一』などと言いつつ、現実にはタイトなFTE計画と、経験不足なメンバーのアサインメントをゴリ押しすることによっての業績アップに固執したのだ」

 

この文章はサイネオスの現状と重なります。

 

社員がサービス残業をしているということは、会社は社員の業務量を全く把握していないということです。

 

ある社員が、ラインマネージャーにその時間でこの業務を終わらせるのは不可能です」と言った時、マネージャーはこう言いました。

 

「みんなアサインされた時間で終わらせています」

 

何のアドバイスにもなっていない上、まるで、業務を終えられないのは本人の能力不足のせいだという口ぶりです

このように言われれば、多くの人は「能力不足だ」と言われるのが怖くなり、サービス残業せざるを得なくなります。

 

しかし、そのマネージャーの他の部下に話を聞くと、複数人がサービス残業を行っていました。

みんなアサインされた時間で終わらせている」のではなく、やむなくサービス残業を行なっていたのです。

 

サイネオスの職場環境は、悪化の一途を辿っていると感じています。

 

ここで話は変わりますが、Jビジネスユニットは、CRAClinical Research Associateに対しビラブル時間98%」を目標に課しています。

 

「ビラブル時間」とは「スポンサーに請求できる業務を行った時間」のことです。

社員は毎週、Timecardという勤怠システムから、その週にどんな業務を何時間行ったかを報告しなければなりません

 

ビラブル時間98%であれば、ノンビラブル時間(社内の業務を行う時間)は2%しかありません。

つまり、社内の業務に費やせる時間は、1ヵ月のうち3.2時間しかないのです

 

これは大変おかしな目標です。

まず、上司と部下の1on1ミーティングが隔週あるので、月に1時間は取られます。

その他にも、会社の全体会議や部署ごとの会議、社内トレーニングなど、社内の必須会議がいくつもあるのです。

 

しかも、Jビジネスユニットではマネージャーが部下にトレーニングをする会議を毎月1時間行っており、休暇・出張中以外の社員は参加しなければなりません。

 

その内容は、組織図の共有や、過去1ヶ月に総務から社員に送信されたメールの読み上げなどが定型化しており、多くの業務を抱える社員にとっては、無駄と思える時間です。

 

しかし、この会議を「効率化」して中止しましょう、とは、誰もマネージャーに言えません。なぜなら、この会議開催は、ディレクターの指示だからです。

 

期日の迫った業務依頼を受けた社員が、ラインマネージャーに、その会議より業務対応を優先させてよいか聞いたところ、マネージャーの返事は

「優先順位を入れ替える等工夫することで対応可能な場合は、会議出席を優先させて下さい」というものでした。

 

その社員は「優先順位を工夫すると出席可能になる」という、マネージャーの回答の意味が全く理解できませんでしたが、会議出席への圧力を感じ、仕方なく会議に出席しました。

 

本当に正直に報告しているなら、常識的に考えて、ビラブル時間98%を達成することは不可能だと思います。このような圧力もサービス残業を加速する1つになっていると考えられます。

 

ここまで、Jビジネスユニットの状況を例に挙げましたが、残念ながら、サイネオスのサービス残業は、Jビジネスユニットに限った問題ではないのです。

 

人事部が信頼できない現在のサイネオスでは、社員が救いを求める場所は社内にありません。

社員が団結できればいいのですが、恐怖政治であるほど声を上げることは難しくなっていきます。

 

サービス残業は、会社にとって大変都合がよいのです。

しかし、それは短絡的なものです。長期的に見れば、社員やスポンサーの信頼を得る道とは逆行しています。

 

組合員の人数増加は、労働組合の影響力に繋がります。ブログをご覧になったサイネオス社員の方は、ユニオンちよだへの加入をご検討いただけたら幸いです。

 

参考記事: ブログ「アラ還オヤジの備忘録」-『FTEとプロジェクトの“炎上“』

https://sugo-mane.hatenablog.com/entry/2020/09/08/153740

 

参考書籍「ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解」

 

〈English version〉

Slack: Getting Past Burnout, Busywork, and the Myth of Total Efficiency