2018年3月よりBさんが異動した人事部では、上長はUマネージャー、上位上長はH担当部長となったが、上長がBさんに具体的な指示を与えず前例も共有しないといったBさんを孤立させる職場環境は変わらなかった。それにも関わらずBさんの能力不足を理由に度々降格させていった。
 例えば、2018年分の人事評価は1ランクダウンとなり、入社時(修士卒)より低いランクとされたのだが、上長と上位上長コメントは以下であった。
上長「一般的に業務に取り組む姿勢、本人の考え方が根本的に異なっているため本人の努力や自発的な行動というものが感じられない。一般的に他力本願的な姿勢が強く、他とのコミュニケーションが不得手であることから多くの業務を担当してもらうことが困難であった。」
上位上長「上長評価と同じ。」
 

 しかし、実際には人事部においてもBさんは、手探りでありながらも、関係しそうなメンバーに早めに問題意識を共有するといった地道な努力や上長達に対しても自発的な行動を重ねてきたのであった。

(例えば、戸籍名と異なる通称使用のルール制定等を提案するも
 

 今回の記事では、上長であるUマネージャー(2020/10/21~Uパートナー)が自身の担当業務を忘れている中Bさんがフォローしたお蔭で、ルール違反を最小限に抑えられ、人事部のルール整備にも貢献したエピソードを紹介する。
 

 AGC(株)の役職者の人事制度では、マネージャーやシニアマネージャーといった係長級以上の役職者は、60歳を過ぎた最初の4/21または10/21付で「パートナー」という役職者になるのだが、Bさんの上長Uマネージャーは2020/10/21付でパートナーとなった。そして、Uマネージャーは少なくともBさんが人事部に異動してきた2018/3には人事部の「業務決裁基準」の主担当者であったためパートナーとなった時点で2年半以上担当していた。その時点では、「業務決裁基準」の表において、100万円未満の費用処理の承認権限は「マネージャー」以上にはあったが「パートナー」は記載されていなかった。
 Bさんは毎月、人事部のメンバーが使用するために購入したオフィス用品や名刺について22日ごろ請求書を受け取り月末までに費用処理していたのであるが、2020/10/21付でUマネージャーがパートナーとなってしまったため、2020/10月末までの費用処理が問題となってしまうことに気づいた。しかし、UパートナーはBさんにこの件の対応方法を指示しないまま10/21を過ぎると休暇を取ってしまった。

 Uパートナーには会社スマホも貸与されていて会社のメールの確認もできるのだが、「従来通りUさんが承認してしまっては、人事部の業務決裁基準に反してしまうのですがどうすればよいですか?」とBさんがメールを入れても反応がなかった。その後Uパートナーは10月末までに勤務はしたが、役職が「パートナー」のまま承認してしまったのである。
 その後、Bさんは、10/21付で同じグループに異動してきた次長級のVさん(上長や上位上長等Bさんを人事評価する立場ではなかった)にこの件を共有したところ、Uパートナー以外にも人事部は60歳を超えた役職者が増えているので人事部として対処すべきことになり、パートナーにも一部の範囲で承認権限を付与するなど人事部の「業務決裁基準」自体の見直しに至ったのであった。

 

 ただ、本来、主担当でもあるUパートナー(2020/10/20までマネージャー)が、自身がマネージャーからパートナーに変わる前に自分事としても、主担当である「業務決裁基準」の見直しをする等自発的に対処を行うべきものと考えると、Bさんは自分が一向に評価されないことが非常に悔しいと思わずにいられなかった。