(いまから約1年前の東京オリンピック1週間前)

 

2021年7月16日(金)、Bさんは在宅勤務のため寮の自室で仕事をしていた。

午後3時頃、Bさんの私用携帯に着信が入った。

見覚えのない番号なので対応しないでいると、その直後、上位上長のH担当部長からメールが入った。

「電話を入れましたが出てくれませんでした。大事な話があるので、寮の共有スペースに至急来るように」と。

一人一台貸与の業務用携帯があるにも関わらず私用携帯に、今週は3日前と1日前に出社していたにも関わらず、何の予告もなくH部長が寮(新丸ビルから約1時間掛かる丘の上)まで来ていることに気味の悪さを感じながら、部屋を出た。


 共有スペース(男性は原則利用禁止と貼り紙も掲示)には、H部長の他にE人事課長が同席、手にはA4の紙を携えていて、一方的に読み上げられた。

 

解雇予告通知  

 このたび、下記のとおり、貴殿を解雇しますので、通知いたします。

 ○解雇日 2021年8月20日

 ○理由 

  就業規則第33条5号に定める

 『技能または能率がきわめて低く、かつ上達または回復の見込みが乏しいか

  あるいは他人の就業にさしつかえがあるなど、

  現職務またはこれに準ずる職務に就業させるのに著しく適さないと認められるとき』に該当するため
 

 AGCに就職して以来、業務に密着した指導はほぼ皆無に等しい中、

これを部門長や人事担当、ハラスメント窓口に相談しても全く取り合われなかった。

それどころか、さらに職場で孤立化させられてきたので、AGCでの辛い9年間がフラッシュバックして耐え難い気持ちに陥った。


 Bさんは「絶対に解雇は認められませんから」と大きな声で意思表示した。

突然言い渡された「解雇予告通知」と「今後の諸手続きについて」の書類は、今後不当解雇として闘う際に必要になる

と自分に言い聞かせ受理した。

そこには次の事が書かれていた。
 ○2021年8月20日までは勤務免除としていますので、会社貸与のパソコンは使用不可、新丸ビルへの入場不可

 ○寮は8/20を入居期限なので、それまでに必ず退去すること

 ○8/19(木)17時までに退職願の提出があった場合は、自己都合退職として取り扱うこと           

 

 この内容では、仮に解雇を受け入れたとしても業務の引継ぎが一切行えず、

他のメンバーへ挨拶も突然会社を去らなければいけなくなることの説明も一切できないし、

パワハラ被害を裏付けたり、解雇理由とされた自身の能力不足を否定することのできる、

裁判等で闘うための証拠となる資料の持ち出しもできないので、

大きなショックを受けた。

 

 突然の解雇通告によって、Bさんの人生にとって、これまで経験のない重く苦しい日々が始まることとなる。しかし、Bさんは諦めずに闘うためユニオンの扉を叩くことになった。