すてきな道を選んだと
女の子は息を弾ませて走り去った
いくつもの道を歩き疲れた身体は
根が腐り始めた老木に背をもたれている
静寂風雅の鳴くほうへ
視線を泳がせれば
夏の晴天と私はここに残された

今住んでいる町と何かが豊かであった日々を
隔てる海峡の上には
労働の終わりとともに何度も渡った
とても長い国道が通っている
黒い煙を吐く車の磨り減ったタイヤが
でこぼこのアスファルトに足を取られる度に
長い国道はみしみしと音を立てる
煙草のヤニで黄ばんだくもの巣の貼る車内の日常から
豊かさを掻い摘んだ灯りの点々と行過ぎるのを眺めながら
かき乱された欲情以外に
思うことなどない

 君とたくさん話をした
 大好きな絵の話をした
 悲しい絵だと君は言った
 僕は優しい絵だと思った
 
 蚊取り線香を買いに行った
 シャボン玉もついでに買った
 とても綺麗だと君は言った
 僕はビールを飲んでいた
 
 君は優しいキスをくれた
 頬に指を滑らせた
 唐突にさよならと君は言った
 僕はさよならと答えた