白玉椿
昏れ方の空とこの地の結界にもみぢ縮れて黒々と散る
初雪に信号の灯の鮮やかし逢へざるひとをおもふこころに
初雪に信号の灯の鮮やかし逢へざるひとをおもふこころに
「飛ぶ」「飛べば。飛ぶなら今よ」薄闇に目覚めておもふ深い淵
その日にはタタタタタタと出ですすみ舞台に見得を切つてみたしや
雪つぶて傍(かたへ)のひとに投げるやに乱れるままに詠ひつぐうた
竹の雪崩れて撥ねる藪中に椿の真つ赤打ち震へたる
雪の朝みつけし小さな足跡はこの家訪ねきケモノあるらむ
雪つぶて傍(かたへ)のひとに投げるやに乱れるままに詠ひつぐうた
竹の雪崩れて撥ねる藪中に椿の真つ赤打ち震へたる
雪の朝みつけし小さな足跡はこの家訪ねきケモノあるらむ
ふかぶかと雪のつもれる庭に咲く白玉椿の愛(かな)しかるなり
ま白なる雪途踏んでゆく丘に花梨の匂ひ何処からかあり
白鷺の降りくる羽根の内側にうつすらと見ゆ あれは紅色
寂寂と雪いだきつつもぬくみ持つ椿のけさも咲きゐてうれし
菜の花の記憶にあるは山畠に鍬うつ若き母のほつれ毛
杳かなる
ほんわりと白き木蓮開きしが闇夜の一処生きを灯せる
ほんわりと白き木蓮開きしが闇夜の一処生きを灯せる
夢に逢ふあなたの傍のわが髪に白き一筋きりきり哀し
きみと見し神戸の夜景は桜樹の墓地から遠く芽吹きに早く
きみが吾の指睦みつつ聞かせしはほのかな星のさびしい話
死者なるは君かわれかと迷へども君振り向けばとりつきて離さじ
ゆつくりと花びらと散る雪のなか抱擁されし杳(はる)かなる日
百合の香のにほへる部屋に暗(ほの)かなる裸体となりてきみと在りたり
夢に逢ひ夢に語れるひとと見る夜明けのだんだん淡き青となる
青葉梟啼かねばならぬ六月の喪失の闇を閉ざさぬために
昼顔の鉄路に添ひて咲きゐるを石のかはりに置かむ 若夏
『草笛』掲載
404)