Ep 73 ☆バスケットボール部☆
ダン!ダダダッ、ダン!
体育館から、ボールが弾む小気味いい音がこぼれてくる。
胸の奥が、そのリズムに会わせて少しずつ跳ね始めた。
そっとドアを開けるとーー
ダンッ!キュッ!ザッ!
光の差し込む体育館の床を男子部員たちが滑るように駆け抜けていた。
ボールの音、シューズの軋む音、掛け声……
全部が混ざって”熱”みたいなものになって、私の目に飛び込んできた。
カ、カッコいい………!!
さっきまで胸を締めつけていた不安のドキドキが、いつの間にかワクワクにすり変わっていた。
バスケットボールって、なんて格好いいんだろう。
そんな私を見つけて、女子バスケ部の顧問が笛を鳴らした。
「ピッ!おーい、みんな、一回集まれー!」
練習の音がスッと止まり、女子部員たちが私の前に集まってくる。
「チッチさんって言うんだって。よろしく!」
「よろしくね~!」
「よかったー!一年、まだ二人しか入ってなかったのよ~」
担任の先生にどこか似た、賢そうな先輩が笑いかけてくれた。
「うちの母が担任なんだって?ふふ、頑張ってね。
分からないことは、一年の子たちに聞いてね!」
「じゃ、練習戻るよー!」
「ピッ、ピピ~…!」
先輩たちは再びコートへ散っていき、体育館にまたリズムが戻った。
そのとき、後ろから声がした。
「え?チッチちゃん、バスケ部に入ったんだ~?よろしくね!」
振り向くと、同じクラスの自動車整備工場の娘。
「チッチちゃんって言うの?よろしくね!」
初めて見る、別のクラスの女の子。
こうしてーー
たった3人の一年生女子バスケ部員がここに誕生した。
